入管法改正により2019年4月よりスタートする新しい在留資格:特定技能(以下、特定技能ビザ)。人手不足とされる14分野に限って認められる就労ビザの1つです。

ここでは、介護分野の特定技能ビザについてご説明致します。

特定技能ビザを取得するための条件は、日本語能力と即戦力となる専門性・技能を持っていることですが、技能実習制度の後継という性質も持ち合わせているため、他の就労ビザにはない基準も多々あります。

介護分野の特定技能ビザの基準は、外国人本人と雇用主双方に設けられています。

  • 外国人本人の条件(一定レベルの技能と日本語能力)
  • 雇用主(特定技能所属機関)の条件

※当記事はH30/12/25閣議決定案・令和2年2月運用要領を参考に執筆しています。

介護分野が特定技能ビザの対象となった趣旨・目的

2017年度における「介護分野」の有効求人倍率は3.64倍で、全体の2倍以上となっています。また、処遇改善手当の交付による待遇改善、介護ロボットやICTの活用による業務負担の軽減や業務負担の軽減や職場環境の改善、研修やシニア人材向け研修や介護福祉士を目指す学生への学生への返済免除付きの奨学金制度の拡充などを進めていますが、政府目標である毎年6万人の人材の追加が必要な業界において、年々目標の達成が困難になりつつあるのが現状です。

そのため、慢性的に不足する労働力を外国人人材で補いたいということで、介護分野が特定技能ビザの対象となっています。

政府の算出では向こう5年間で30万人の労働力不足になるとされています。そして、生産性の向上や国内人材の確保で約24万人の労働力を補える見込みであり、それでも足りない6万人を特定技能ビザで補おうとしています

介護分野の特定技能ビザが認められる仕事内容

介護分野で認められる仕事内容は、身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助等)とされています。

あわせて、これらの業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(例:
お知らせ等の掲示物の管理、物品の補充等)に付随的に従事することは差し支えないとされています。

一般的な介護の中で除外されているものが1つあります。訪問介護等の訪問系サービスにおける業務は対象としないとされていますのでご注意ください。

介護分野の対象となる事業者

介護分野の特定技能ビザは、自治体が発行する指定通知書等を事業者が受けていることが必要です。指定通知書とは、介護保険法等に基づく事業所の指定や、医療法に基づく病院等の開設許可を証する書面のことです。

具体的な分類は申請で使用する書類に一覧がありましたので、リンクを貼っておきます。

・特定技能介護 施設種別コード表

特定技能1号、2号について

特定技能には1号、2号の2種類があり、1号は5年の期間工という位置づけです。2号は長期在留が可能で様々な優遇措置が設けられています。

介護分野は1号のみ認められていますので、雇用期間は最長で5年となります。ただし、技能実習生とは異なり他の在留資格への変更は認められていますので、 特定技能ビザ以外へ変更ができれば5年を超えての雇用も可能です。

特定技能1号ビザ特定技能2号ビザ
在留期間最長5年制限無し
家族帯同不可可能
開始スタート2019年4月無し
他の在留資格への
変更
可能可能

特定技能ビザの取得条件は、様々な条件を満たす必要があります。外国人本人は人材に関する事項をクリアしなければなりません。

また、外国人本人に課せられる条件以外に、雇用主(特定技能所属機関)に課される事項も設けられています。本人の素養以外にも雇用側もクリアしなければならない条件があるということです。

特定技能ビザを取れないケース

入管法の適切な運用のために、以下に該当する方は特定技能ビザを取得が困難です。

①退学・除籍処分となった留学生
②失踪した技能実習生
③短期滞在ビザで来日中の外国人
④帰国することが前提の在留資格(ビザ)の外国人
⑤もともと他の在留資格(ビザ)に変更が予定されている外国人

ただし、「相当の理由があるとは認められない」と判断された場合の話ですので、絶対ではありません。例えば失踪した技能実習生であれば、失踪せざるを得ない理由(暴力や賃金未払い)などであれば可能性はあると考えています。

また、④の「帰国することが前提の在留資格(ビザ)の外国人」には、活動計画を立てて来日した研修ビザや技能実習生も含まれますが、あくまでも計画を投げだして特定技能ビザに変更ができないだけであり、計画が終了したタイミングでの特定技能ビザへの変更は可能です。

特定技能1号ビザの条件(人材の基準に関する事項)

特定技能ビザを取得する外国人労働者には一定以上の「技能」と「日本語能力」が求められます。その能力を測るために、評価試験の合格や資格取得が条件とされています。

また、一定の技能実習生については上記が免除されます。

介護分野特定技能1号ビザの技術水準及び評価基準

介護分野における特定技能1号ビザに求められる技能の評価水準は、介護業務で必要とされる一定の専門性・技能を有し、即戦力となるに足りる相当程度の知識又は経験を有するものとされています。

介護分野の特定技能ビザを取得するためには、下記試験の合格が必要です。

介護技能評価試験
試験言語:現地語
実施主体:厚生労働省、介護技能評価試験等実施事業者
実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式又はペーパーテスト方式
実施回数:2020年度は原則毎年実施

介護分野特定技能1号ビザの日本語能力評価基準

日本語能力に関しては、2つの試験の合格が必要です。

  • 介護日本語評価試験
  • 日本語能力試験(N4以上)または国際交流基金日本語基礎テスト

介護日本語評価試験は必須となります。他の分野の特定技能はN4の合格で十分だったのですが、介護分野では介護用の日本語試験の合格も必要になります。介護は相手とのコミュニケーションが重要ですので、ほかの分野の特定技能ビザよりも専門性のある日本語の能力を求めているということです。介護分野の介護分野の運用要領には、介護現場で介護業務に従事する上で支障のない程度の水準の日本語能力も有することが必要とされています。

① 介護技能評価試験
試験言語:現地語
実施主体:厚生労働省、介護技能評価試験等実施事業者
実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式又はペーパーテスト方式
実施回数:2020年度は原則毎年実施
② 日本語能力試験(N4以上)
実施主体:独立行政法人国際交流基金及び日本国際教育支援協会
実施方法:マークシート方式
実施回数:国内外で実施。国外では80か国・地域・239都市で年おおむね1回から2回実施(平成29年度)
③ 国際交流基金日本語基礎テスト
実施主体:独立行政法人国際交流基金
実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式
実施回数:外務省と国際交流基金が協議の上、事業年度ごとに複数回実施する。

評価試験等の免除(技能実習2号の修了)

介護の技能実習2号を修了した場合は必要な技能水準・日本語能力水準を満たしているものとして、上記の技能・日本語能力の評価試験は不要となります。

「介護分野における特定技能協議会」の設置

厚生労働省が管轄し、関係業界団体と特定技能受入機関により構成される「介護分野における特定技能協議会」(以下「協議会」という。)があり、特定技能を雇用する事業者(特定技能所属機関)は構成員にならなくてはなりません。

この協議会の活動内容は下記の通りです。

  • 在留資格「特定技能」の趣旨や優良事例の全国的な周知
  • 地域別の人手不足の状況の把握・分析

雇用側(特定技能所属機関)に対して特に課す条件

介護分野における特定技能ビザ外国人の雇用側(特定技能所属機関)には一般的な就労ビザとは異なる基準が設けられています。

  1. 協議会の構成員になること
  2. 協議会に対し、必要な協力を行うこと
  3. 厚生労働省が行う調査等に対し、必要な協力を行うこと
  4. 事業所において、1号特定技能外国人の数が当該事業所の日本人等の常勤の介護職員の総数を超えないこと
  5. 直接雇用であること(派遣はNG)

1号特定技能外国人支援について

雇用側に必要な事項は上記以外にもあります。特定技能1号ビザの外国人の受け入れにあたって、1号特定技能外国人支援計画の策定と実行が必要です。技能実習制度における監理団体が担っていた部分と理解してもらえればいいと思います。日本に不慣れな外国人のお世話をするということになりますが、例えば、空港へ出迎えへや見送り、生活支援や相談などが挙げられます。

これらの策定と実行は、雇用側(特定技能所属機関)が主体になることもできますし、登録支援機関に外注することも可能です。

介護分野における受け入れ見込み数について

介護分野における特定技能ビザ1号の在留資格の向こう5年間で受け入れ見込み数は最大6万人です。

受け入れ見込み数を超える場合

受け入れ見込み数が6万人を超える見込みになった場合、受け入れ停止措置ルールが設けられています。そして、受け入れ再開のルールも盛り込まれています。

おそらく、年度毎に受け入れ人数を決めて労働者数が年度によって大きくばらつきが無いように調整するものと予想します。つまり、毎年○万人などの目標値を決め、超えれば受けれ入れ停止、年度が変われば再開といった具合にです。特定技能ビザの取得は早いもの勝ちになるかもしれません。

その他の在留資格

特定技能ビザ以外の在留資格でも、これらの業種で働くことができる場合があります。

介護ビザ等

介護をするためのビザは複数用意されています。

  • 特定活動(EPA)ビザ
  • 介護ビザ
  • 技能実習ビザ
  • 特定技能1号ビザ

基本的には日本の介護福祉士を取得できれば介護士として日本で働き続けることが可能です。

それぞれの詳細はこちらのリンクをご確認ください。

技術・人文知識・国際業務ビザ

介護そのものに携わらない仕事であればこちらのビザが該当する可能性が高いです。例えば、事務職や施設管理などです。

配偶者ビザ・定住者ビザ・永住者ビザ

これらの在留資格は「就労制限がない」ので、日本人と同じように雇用することが可能です。

留学ビザや家族滞在ビザなど資格外活動許可所持者

留学ビザをお持ちの外国人の多くは「資格外活動許可」を持っています。家族滞在ビザも同様です。

この許可を持っていれば、業種を問わず週28時間の労働が可能です。