入管法改正により2019年4月よりスタートする新しい在留資格:特定技能(以下、特定技能ビザ)。人手不足とされる14分野に限って認められる就労ビザの1つです。

ここでは、飲食料品製造業分野の特定技能ビザについてご説明致します。

特定技能ビザを取得するための条件は、日本語能力と即戦力となる専門性・技能を持っていることですが、技能実習制度の後継という性質も持ち合わせているため、他の就労ビザにはない基準も多々あります。

飲食料品製造業分野の特定技能ビザの基準は、外国人本人と雇用主双方に設けられています。

  • 外国人本人の条件(一定レベルの技能と日本語能力)
  • 雇用主(特定技能所属機関)の条件

※当記事はH30/12/25閣議決定案・H30/12/25運用要領を参考に執筆しています。

飲食料品製造業分野が特定技能ビザの対象となった趣旨・目的

2017年度における「飲食料品製造業」の有効求人倍率は2.78倍で、全体の2倍近くとなっています。また、女性登用やロボット導入なども進めているものの限界があり、他方、HACCPを含む衛生管理の知識を有する人材の確保も必要という情勢もあります。

そのため、慢性的に不足する労働力を外国人人材で補いたいということで、飲食料品製造業が特定技能ビザの対象となっています。

また、政府の算出では向こう5年間で7万3千人の労働力不足になるとされています。そして、生産性の向上や国内人材の確保で約3万9千人の労働力を補える見込みであり、それでも足りない3万4千人を特定技能ビザで補おうとしています

飲食料品製造業分野の特定技能ビザが認められる仕事内容

飲食料品製造業分野で認められる仕事内容は、飲食料品製造業全般(飲食料品(酒類を除く。)の製造・加工、安全衛生)となります

また、当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(原料の調達・受入れ、製品の納品、清掃、事業所の管理の作業等)に付随的に従事することは差し支えありません。

飲食料品製造業分野の対象となる事業者

飲食料品製造業分野の特定技能ビザは、日本標準産業分類に該当する事業者が行う業務に限られます。

  • 09 食料品製造業
  • 101 清涼飲料製造業
  • 103 茶・コーヒー製造業(清涼飲料を除く)
  • 104 製氷業
  • 5861 菓子小売業(製造小売)
  • 5863 パン小売業(製造小売)
  • 5897 豆腐・かまぼこ等加工食品小売業

特定技能1号、2号について

特定技能には1号、2号の2種類があり、1号は5年の期間工という位置づけです。2号は長期在留が可能で様々な優遇措置が設けられています。

飲食料品製造業分野は1号のみ認められていますので、雇用期間は最長で5年となります。ただし、技能実習生とは異なり他の在留資格への変更は認められていますので、 特定技能ビザ以外へ変更ができれば5年を超えての雇用も可能です。

特定技能1号ビザ特定技能2号ビザ
在留期間最長5年制限無し
家族帯同不可可能
開始スタート2019年4月無し
他の在留資格への
変更
可能可能

特定技能ビザの取得条件は、様々な条件を満たす必要があります。外国人本人は人材に関する事項をクリアしなければなりません。

また、外国人本人に課せられる条件以外に、雇用主(特定技能所属機関)に課される事項も設けられています。本人の素養以外にも雇用側もクリアしなければならない条件があるということです。

特定技能ビザを取れないケース

入管法の適切な運用のために、以下に該当する方は特定技能ビザを取得が困難です。

①退学・除籍処分となった留学生
②失踪した技能実習生
③短期滞在ビザで来日中の外国人
④帰国することが前提の在留資格(ビザ)の外国人
⑤もともと他の在留資格(ビザ)に変更が予定されている外国人

ただし、「相当の理由があるとは認められない」と判断された場合の話ですので、絶対ではありません。例えば失踪した技能実習生であれば、失踪せざるを得ない理由(暴力や賃金未払い)などであれば可能性はあると考えています。

また、④の「帰国することが前提の在留資格(ビザ)の外国人」には、活動計画を立てて来日した研修ビザや技能実習生も含まれますが、あくまでも計画を投げだして特定技能ビザに変更ができないだけであり、計画が終了したタイミングでの特定技能ビザへの変更は可能です。

特定技能1号ビザの条件(人材の基準に関する事項)

特定技能ビザを取得する外国人労働者には一定以上の「技能」と「日本語能力」が求められます。その能力を測るために、評価試験の合格や資格取得が条件とされています。

また、一定の技能実習生については上記が免除されます。

飲食料品製造業分野特定技能1号ビザの技術水準及び評価基準

飲食料品製造業分野における特定技能1号ビザに求められる技能の評価水準は、食品等を衛生的に取り扱う基本的な知識を有しており、飲食料品の製造・加工作業について、特段の育成・訓練を受けることなく、直ちにHACCP(原材料の受入れから最終製品までの工程ごとに、微生物による汚染、金属の混入等の潜在的な危害要因を分析し、特に重要な工程を継続的に監視、記録する工程管理システム)に沿った衛生管理に対応できる程度の業務に従事できるレベルの知識や経験を有するものとされています。

飲食料品製造業分野の特定技能ビザを取得するためには、下記試験の合格が必要です。

飲食料品製造業技能測定試験(仮称)
試験言語:現地語
実施主体:公募により選定した民間事業者
実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式又はペーパーテスト方式
実施回数:国内及び国外でそれぞれおおむね年10回程度実施予定
開始時期:2019年10月予定

飲食料品製造業分野特定技能1号ビザの日本語能力評価基準

日本語能力に関しては、新設予定の日本語能力判定テスト(仮称)に合格するか、日本語能力試験でN4以上が必要となります。

いずれの基準も、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力」が必要とされています。

① 日本語能力判定テスト(仮称)
実施主体:独立行政法人国際交流基金
実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式
実施回数:年おおむね6回程度、国外実施を予定
開始時期:2019年秋以降から活用予定
② 日本語能力試験(N4以上)
実施主体:独立行政法人国際交流基金及び日本国際教育支援協会
実施方法:マークシート方式
実施回数:国内外で実施。国外では80か国・地域・239都市で年おおむね1回から2回実施(平成29年度)

評価試験等の免除(技能実習2号の修了)

技能実習生のうち、下記表の技能実習2号を修了した場合は必要な技能水準・日本語能力水準を満たしているものとして、上記の技能・日本語能力の評価試験は不要となります。

対象となる技能実習2号の職種は下記の通りです。

■業務区分:飲食料品製造業全般(飲食料品(酒類を除く)の製造・加工、安全衛生

職種作業
缶詰巻締缶詰巻締
食鳥処理加工業食鳥処理加工
加熱性水産加工食品製造業節類製造

加熱乾製品製造
調味加工品製造
くん製品製造
非加熱性水産加工食品製造業塩蔵品製造
乾製品製造
発酵食品製造
水産練り製品製造かまぼこ製品製造
牛豚食肉処理加工業牛豚部分肉製造
ハム・ソーセージ・ベーコン製造ハム・ソーセージ・ベーコン製造
パン製造パン製造
そう菜製造業そう菜加工
農産物漬物製造業農産物漬物製造

「食品産業特定技能協議会(仮称)」の設置

農林水産省は、関係業界団体、登録支援機関その他の関係者により構成される「食品産業特定技能協議会(仮称)」(以下「協議会」という。)を組織するとされています。

雇用主(特定技能所属機関)や飲食料品製造業を扱う登録支援機関は構成員にならなくてはなりません。

この評議会の活動内容は下記の通りです。

  • 外国人の受入れに関する情報の周知その他制度理解の促進
  • 法令遵守に関する通知及び不正行為に対する横断的な再発防止
  • 外国人の受入れ状況の把握及び農林水産省への報告
  • 人材が不足している地域の状況の把握及び当該地域への配慮
  • その他外国人の適正で円滑な受入れ及び外国人の保護に資する取組

雇用側(特定技能所属機関)に対して特に課す条件

飲食料品製造業分野における特定技能ビザ外国人の雇用側(特定技能所属機関)には一般的な就労ビザとは異なる基準が設けられています。

  1. 「食品産業特定技能協議会(仮称)」(以下「協議会」という。)の構成員になること
  2. 協議会に対し、必要な協力を行うこと
  3. 農林水産省又はその委託を受けた者が行う調査等に対し、必要な協力を行うこと
  4. 登録支援機関を利用する場合は、協議会の構成員となっている登録支援機関を利用すること
  5. 直接雇用であること(派遣NG)

1号特定技能外国人支援について

雇用側に必要な事項は上記以外にもあります。特定技能1号ビザの外国人の受け入れにあたって、1号特定技能外国人支援計画の策定と実行が必要です。技能実習制度における監理団体が担っていた部分と理解してもらえればいいと思います。日本に不慣れな外国人のお世話をするということになりますが、例えば、空港へ出迎えへや見送り、生活支援や相談などが挙げられます。

これらの策定と実行は、雇用側(特定技能所属機関)が主体になることもできますし、登録支援機関に外注することも可能です。また、前述の通り、飲食料品製造業については登録支援機関が協議会の構成員になっていることが必要です。

飲食料品製造業分野における受け入れ見込み数について

飲食料品製造業分野における特定技能ビザ1号の在留資格の向こう5年間で受け入れ見込み数は最大3万4千人です。

受け入れ見込み数を超える場合

受け入れ見込み数が3万人4千人を超える見込みになった場合、受け入れ停止措置ルールが設けられています。そして、受け入れ再開のルールも盛り込まれています。

おそらく、年度毎に受け入れ人数を決めて労働者数が年度によって大きくばらつきが無いように調整するものと予想します。つまり、毎年○万人などの目標値を決め、超えれば受けれ入れ停止、年度が変われば再開といった具合にです。特定技能ビザの取得は早いもの勝ちになるかもしれません。

人手不足の状況の確認方法

下記の指標で国土交通大臣は状況把握することになっています。

  1. 飲食料品製造業分野の1号特定技能外国人在留者数(3か月に1回法務省から農林水産省に提供)
  2. 有効求人倍率
  3. 欠員率、欠員数
  4. 雇用人員判断(DI)

受け入れ見込み数が増減?

人手不足の状況に応じて運用方針の見直しの検討・発議等をすることになっています。つまり、当初は3万4千人でしたが、増減する可能性があるということです。

その他の在留資格

特定技能ビザ以外の在留資格でも、これらの業種で働くことができる場合があります。

技術・人文知識・国際業務ビザ

製造そのものに携わらない仕事であればこちらのビザが該当する可能性が高いです。例えば、設備管理や工程管理、調達などです。

配偶者ビザ・定住者ビザ・永住者ビザ

これらの在留資格は「就労制限がない」ので、日本人と同じように雇用することが可能です。

留学ビザや家族滞在ビザなど資格外活動許可所持者

留学ビザをお持ちの外国人の多くは「資格外活動許可」を持っています。家族滞在ビザも同様です。

この許可を持っていれば、業種を問わず週28時間の労働が可能です。