• 「どうしても日本人が集まらない」
  • 「アルバイトの外国人を卒業後も雇いたい」
  • 「就労ビザでは働けない仕事だが、何とか外国人を雇いたい」

これまで、サービス業、飲食店、工場のような下記のジャンルで外国人を雇用するのは非常に難しかったです。

ファストフード、レストラン、居酒屋、アパレル小売り、コンビニ、工場、ライン、旅館、ホテル、介護(無資格の場合)、タクシードライバーetc…

一般的な就労ビザである「技術・人文知識・国際業務ビザ」ではアルバイトが行うような仕事は原則不可であり、また、外国語ができるから外国人を雇用したいという場合であっても、外国語が必要な業務量が少ない理由で不可となるケースが多くありました。

そのため、アルバイトの優秀な外国人の正式登用ができないケースが多く、外国人が必要な環境であっても全てアルバイトで賄う必要が多くありました。

今回は、このようなケースでも取得可能な就労ビザの1つである「特定活動46号」をご紹介します

特定活動46号とは

特定活動46号とは、日本の大学を卒業した外国人の就職先支援を目的として創設されたで、在留資格:特定活動の数ある中の1つです。大卒ビザと言ってもいいかもしれませんね。2018年5月からスタートしました。

正式名称は「特定活動(本邦大学卒業者)」です。以後、特定活動46号としてお話してきます。

特定活動46号は、今まで技術・人文知識・国際業務ビザでは働くことができなかった一般的なサービス業務や製造業務等が主たる活動も、要件を満たせば可能となります。

特定活動46号で可能な活動例

「留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学卒業者)についてのガイドライン」より事例を抜粋しました。

※「【解説】」も入れておりますが、端的な表現にしています。必ずしも該当するとは言い切れません。あくまで参考程度にとどめて下さい。

飲食店

飲食店に採用され,店舗管理業務や通訳を兼ねた接客業務を行うもの(日本人に対する接客を行うことも可能です。)。

※ 厨房での皿洗いや清掃にのみ従事することは認められません。

【解説】ホールはOK。キッチン・厨房はNG。

工場のライン

工場のラインにおいて,日本人従業員から受けた作業指示を技能実習生や他の外国人従業員に対し外国語で伝達・指導しつつ,自らもラインに入って業務を行うもの。

※ ラインで指示された作業にのみ従事することは認められません。

【解説】外国人が入るラインの中間管理職ならOK。ラインの下っ端はNG。

食品製造会社

食品製造会社において,他の従業員との間で日本語を用いたコミュニケーションを取りながら商品の企画・開発を行いつつ,自らも商品製造ラインに入って作業を行うもの。

※ 単に商品製造ラインに入り,日本語による作業指示を受け,指示された作業にのみ従事することは認められません。

【解説】企画・開発に携わるポジションならラインOK。ただのライン作業はNG。

小売店

小売店において,仕入れ,商品企画や,通訳を兼ねた接客販売業務を行うもの(日本人に対する接客販売業務を行うことも可能です。)。

※ 商品の陳列や店舗の清掃にのみ従事することは認められません。

【解説】接客があればOK。接客がないのはNG。

ホテルや旅館

ホテルや旅館において,翻訳業務を兼ねた外国語によるホームページの開設,更新作業等の広報業務を行うものや,外国人客への通訳(案内)を兼ねたベルスタッフやドアマンとして接客を行うもの(日本人に対する接客を行うことも可能です。)。

※ 客室の清掃にのみ従事することは認められません。

【解説】接客があればOK。バックヤード業務はNG。

タクシードライバー

タクシー会社において,観光客(集客)のための企画・立案や自ら通訳を兼ねた観光案内を行うタクシードライバーとして活動するもの(通常のタクシードライバーとして乗務することも可能です。)。

※ 車両の整備や清掃のみに従事することは認められません。

【解説】タクシードライバーはOK。営業所での整備や清掃要員はNG。

介護施設

介護施設において,外国人従業員や技能実習生への指導を行いながら,日本語を
用いて介護業務に従事するもの。

※ 施設内の清掃や衣服の洗濯のみに従事することは認められません。

【解説】外国人の上司ポジションでの介護業務なら介護福祉士を持っていなくてもOK。介護業務以外のみはNG。

【解説2】介護業務が認められるビザは、特定活動46号の他に有資格者用の介護ビザや技能実習生、特定技能外国人など様々な在留資格があります。

特定活動46号ではできない業務

下記の業務については、特定活動46号でできる可能性は全くありません。

  • 風俗営業活動
  • 法律上資格を有する者が行うこととされている業務(業務独占資格を要する業務)

特定活動46号に求められる要件:外国人要件

外国人に必要な要件は、下記の3つです。かなり優秀な人ですね。

  • 日本の4年制大学を卒業or日本の大学院を修了していること
  • 日本語能力N1相当以上or日本語専攻
  • 素行不良でないこと

日本の4年制大学を卒業or日本の大学院を修了していること

日本の4年生大学を卒業」または「日本の大学院を修了」していることが必要です。海外の大学や短期大学、専門学校では要件を満たしませんし、博士課程も×です。

日本語能力N1相当以上or日本語専攻

日本語ペラペラの外国人のためのビザと認識してもらえれば。

下記のいずれか1つを満たす必要があります。

  • 日本語能力試験 N1(旧試験制度の「1級」も対象)
  • BJTビジネス日本語能力テスト 480点以上
  • 大学又は大学院において「日本語」を専攻して卒業

日本語能力試験N1や日本語を専攻していれば要件を満たしますね。

素行不良でないこと

基本的に、ビザの変更や更新は不良外国人には厳しいです。日本のルールをしっかり守ってくださいということですね。

例えば、学生の時などで資格外活動許可の28時間を守れていなかったり、入管法上の届出を行っていないなどです。

特定活動46号に求められる要件:雇用主要件

特定活動46号は「日本語を使う仕事」であることが必須です。そのために日本語要件がありますので。また、正社員・契約社員として雇用する必要があります。

  • 日本語が必須の仕事であること
  • 大学・大学院での専攻と仕事が関係していること
  • 日本人と同じ報酬
  • フルタイム雇用
  • 直接雇用(派遣NG)

日本語が必須の仕事であること

出入国在留管理局から発表されているガイドラインでは「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」であることが必要とされています。

「日本語を使えばいいんでしょ?」ではないんです。

NGな例を挙げると、日本語で指示を聞いて黙々とこなすような受動的な作業。技能実習生のような単純作業はダメということです。このケースでは上司からの一方通行のコミュニケーションと言えますね。

OKなのは、日本人と外国人を繋ぐ橋渡し、つまり、通訳・翻訳要素がある業務であったり、日本語でお客様や他の従業員と会話する業務など、双方向のコミュニケーションが必要とされています。

「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」とは,単に雇用主等からの作業指示を理解し,自らの作業を行うだけの受動的な業務では足りず,いわゆる「翻訳・通訳」の要素のある業務や,自ら第三者へ働きかける際に必要となる日本語能力が求められ,他者との双方向のコミュニケーションを要する業務であることを意味します。

出入国在留管理局から発表されているガイドライン

大学・大学院で学んだことが活かせること

出入国在留管理局から発表されているガイドラインでは「本邦の大学又は大学院において修得した広い知識及び応用的能力等を活用するものと認められること 」であることが必要とされています。

難しい表現となっていますが、簡単に考えても大丈夫です。ガイドラインでは具体的な業務についても下記の通り例示されています。

  • 商品企画
  • 技術開発
  • 営業
  • 管理業務
  • 企画業務(広報)
  • 教育等

これらの業務が含まれていること、または今後その業務が含まれることが必要とされています。

従事しようとする業務内容に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の対象となる学術上の素養等を背景とする一定水準以上の業務が含まれていること,又は,今後当該業務に従事することが見込まれることを意味します。
※ 「学術上の素養等を背景とする一定水準以上の業務」とは,一般的に,大学において修得する知識が必要となるような業務(商品企画,技術開発,営業,管理業務,企画業務(広報),教育等)を意味します。

出入国在留管理局から発表されているガイドライン

日本人と同じ報酬

日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」とされています。もちろんアルバイトと同額はNG。昇給等についても日本人と同じ扱いにする必要があります。

「○○円以上が必要」というボーダーは無く、あくまでその会社の給与体系次第です。従業員がいない場合は、その地域、その業種の一般的な水準額にする必要があります。

また、特定活動46号の外国人は「4年制大学卒」「大学院卒」の学歴を持っていますので、日本人の4年制大卒・院卒と同水準の報酬にする必要があります

そして、中途採用(学校卒業後に経験を積んでいる)の場合もその経験を評価した報酬にしなければなりません。

簡単に言えば、「日本人と同じ報酬にしなさい」ということです。外国人だから安いという論法はNGです。

フルタイム雇用

雇用形態は「常勤の職員」。正社員や契約社員での雇用しかできません。アルバイトやパート、派遣はNGです。

当然、特定活動46号で雇用した外国人は社保に加入させなければなりません。

その他のポイント

「特定活動」という在留資格は様々な状況の外国人をカバーするためのビザです。帰国困難者向けの特定活動もあれば、就職活動中の特定活動、出国までの準備機関用の特定活動などもあり、名称としては良くないイメージを持っているかもしれません。

しかし、特定活動46号は「就労ビザ」です。

一般の就労ビザにあるように家族用のビザも取得できますし、ゆくゆくは永住も可能です。

家族滞在可能

特定活動46号は家族滞在が可能です。特定活動46号の配偶者や子供は「特定活動(本邦大学卒業者の配偶者等)」という在留資格が取得できます。特定活動47号という番号になります。

また、注意いただきたいのは「扶養を受ける配偶者、子」に限定されるということです。在留資格:家族滞在と同じ扱いですね。

在留期間は「1年」からスタート

原則として、「留学」の在留資格からの変更許可時や初回の在留期間更新許可時に決定される在留期間は「1年」とされています。

つまり、特定活動46号を取得した最初の在留期間は1年、次の更新申請の時も1年となるということです。技術・人文知識・国際業務ビザであれば、初回から3年を取れるケースも多くありますが、特定活動46号では基本的に「1年」と考えてください。

ちなみに、在留期間は最長で5年、最短で3か月です(5年、3年、1年、6月、3月)。

転職可能。ただし、ビザ申請が必要

特定活動46号は転職が可能です。

しかし、技術・人文知識・国際業務ビザでは仕事内容に対して許可されるのですが、特定活動46号は仕事内容+雇用先がセットになっているため、転職の際は改めてビザ申請が必要です(在留資格変更許可申請)。

技術・人文知識・国際業務ビザでは転職後すぐに働くことができましたが、特定活動46号ではビザ申請をして許可が下りてからしか転職先で勤務開始できません。そのため、内定を出してすぐにビザ申請をした方が良いですね。審査期間は2週間~1か月程度です。

永住可能

働き続ければ、永住許可申請も可能です。新卒で特定活動46号を取った場合、5年以上働き続けて10年以上日本に住み続ければ永住の道が開けます。

外国人の方へアドバイス:高度人材も視野に入る(高度専門職)

在留資格の1つに「高度専門職」というものがあります。これは、高学歴であったり高収入の外国人向けの在留資格で、在留期間が即5年、永住の許可要件の緩和など外国人にとって大きなメリットがあります。

高度専門職は「高度人材ポイント表」のポイントが70点以上あれば対象となるのですが、特定活動46号を取得できる外国人は少なくとも下記の点数は取得しているはずです。

  • 大卒又はこれと同等以上の教育(博士,修士を除く)・・・10点(院卒は20点)
  • 日本の大学を卒業又は大学院の課程を修了・・・10点
  • 日本語専攻で外国の大学を卒業又は日本語能力試験N1合格相当・・・15点

4年制大卒の外国人で最低でも35点院卒であれば45点です。

そして、30歳未満であれば15点、一流大学卒業(関西だと大阪大学、京都大学)で10点となりますので、大阪大学・京都大学の院卒の30歳未満の外国人は70点あることになり、特定活動46号や技術・人文知識・国際業務ビザではなく、いきなり高度専門職を取得することができます。

そして、特定活動46号の業務内容は高度専門職では認められにくい仕事になりますので、在留資格の観点から言いますと、デスクワーク業務の会社を探すべきとも言えますね。

特定活動46号の外国人の雇用方法

アルバイトから昇格

一番多いケースがアルバイトからの社員登用ではないでしょうか。4年制大学の留学生バイトを雇用している場合、卒業までに日本語能力試験N1合格を目指すように促してあげて下さい。

募集(紹介会社へ依頼)

下記2項目を満たす外国人の紹介を依頼してください

  • 日本の4年制大学または日本の大学院卒
  • 日本語能力試験N1(または BJTビジネス日本語能力テスト 480点以上または国内外の大学・大学院で日本語を専攻)

もしくは、永住者、配偶者ビザ、定住者ビザを持っている外国人です。これらのビザは仕事内容に制限がありません。

特定活動46号と技術・人文知識・国際業務、どっちがいい?

法律に則って言えば、「比べるものではない」というのが結論です。それは、可能な業務内容が異なるから。特定活動46号と技術・人文知識・国際業務ビザはどちらも「学術上の素養等を背景とする一定水準以上の業務」とされていますが、特定活動46号はブルーカラー業務が認められ、技術・人文知識・国際業務ビザは原則認められないからです。

ただ、その境界線上、グレーゾーンの判断が難しいので、個別に判断する必要があります。

特定活動46号が取得できる素養のある外国人であれば、特定活動46号を選択した方が間違いないですね。技術・人文知識・国際業務ビザが取得できたとしても、認められている業務内容ではないとして不法就労に問われることがあるからです。

特定活動46号の申請は難しい?

特定活動46号の本質を理解していない限りは難しいと言えると思います。外国人本人の要件だけでなく、雇用側の要件もしっかりと定められていますので、理解の浅いまま申請すると不許可になることは当然のことながら、許可が出たとしても実は不法就労だったということも往々にしてあり得ます。

特定活動46号はアパレルや飲食店、小売業、工場にとっては日本人の新入社員とほぼ同じ働き方はできますが、全く一緒ではないからです。他の就労ビザと同様に、仕事内容を審査されるということを念頭に置く必要があります。

そうした意味では、ビザの申請の際には専門家に入ってもらい、業務内容から精査した上で申請に臨むのがベターかと思います。

特定活動46号の申請の必要書類について

特定活動46号のビザ申請の必要書類は以下の通りです。

技術・人文知識・国際業務ビザで必要だった決算書類や給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表は不要になっていますが、その代わりカテゴリーによる優遇は無くなっています(技術・人文知識・国際業務ビザでは上場企業などは提出書類が少ない)。

(1)申請書(在留資格認定証明書交付申請書又は在留資格変更許可申請書)
(2)写真(縦4cm×横3cm)
(3)返信用封筒(在留資格認定証明書交付申請時のみ。404円分の切手を貼付)
(4)パスポート及び在留カード(在留資格変更許可申請時のみ)
(5)申請人の活動内容等を明らかにする資料(労働条件通知書等)
(6)雇用理由書
雇用契約書の業務内容から,日本語を用いた業務等,本制度に該当する業務に従
事することが明らかな場合は提出不要です。
所属機関が作成したものが必要です。様式は自由ですが,所属機関名及び代表者
名の記名押印が必要です。
(7)申請人の学歴を証明する文書(卒業証書(写し)又は卒業証明書)
(8)申請人の日本語能力を証明する文書(日本語能力試験N1又はBJTビジネス日本語能力テスト480点以上、外国の大学において日本語を専攻した者についてはその卒業証明書など)
(9)事業内容を明らかにする次のいずれかの資料
 1.勤務先等の沿革,役員,組織,事業内容(主要取引先と取引実績を含む。)等
が記載された案内書
 2.その他の勤務先等の作成した上記1.に準ずる文書
 3.勤務先のホームページの写し(事業概要が確認できるトップページ等のみで可)
 4.登記事項証明書
※転職による在留資格変更許可申請については,(7)及び(8)は不要です。

(6)の雇用理由書は、雇用契約書等の内容から業務内容が明らかに特定活動46号にマッチしていると判断できるのであれば提出不要とされています。

しかし、特定活動46号の業務内容が単純労働と技術・人文知識・国際業務ビザの間の業務であるということを考えれば、雇用理由書の提出は必須かと思います。

まとめ

優秀な外国人用のビザですので、対象となる外国人が少ないということがネック。そして、雇用主側は外国人を繋ぎとめる努力も必要になるかと思います。ビザ申請でアタフタしている間に、外国人から「違う会社に決めました」と言われることが他の就労ビザより多いのではないでしょうか。

しかし、特定活動46号はこれまで該当するビザが無い仕事ゾーンをカバーする在留資格ですので、雇用側としては日本人を総合職採用した場合とほぼ同じように仕事をさせることができます。就労ビザで雇用できないゾーンがこのビザによって補充できるようになりましたので、人材難の会社としては非常に良い制度だと思います。

弊所で特定活動46号の申請書類作成・申請代行を承ります。

弊所は外国人のビザを専門に扱う行政書士事務所です。基本的な申請書作成や申請代行はもちろん、理由書の作成や業務内容のコンサルティングも行っております。

ご相談を受けてから申請までは2~4週間審査結果が出るまでは1~2か月が目安です。

初回相談は60分間無料。基本的にご来所して頂きたいですが、もちろんオンライン面談も可能ですので、お気軽にご相談くださいね。