社員のビザ申請を自社で管理・支援している会社様、または検討されている会社様に朗報です。2019年7月25日から在留資格のウェブ申請がスタートします。全てのビザ申請ができるわけではありませんが、外国人従業員や留学生のビザ更新の負担を大幅に軽減できますので、福利厚生の一環として、または外国人従業員・留学生の適切なビザ管理のためにご検討されてみてはいかがでしょうか。

また、全てのビザの申請がオンラインで出来るようになるわけではなく、ビザの更新・延長(在留期間更新許可申請)が主になりますので、外国から呼び寄せたり、就職時の就労ビザへの変更には利用できません。

在留申請オンラインシステムの開始時期

ビザ申請の電子申請は事前登録制となっております。

登録申込:いつでも

登録先:所属機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理官署

利用開始時期:2019年7月25日

在留申請オンラインシステムの利用対象者

ビザ申請の電子申請は外国人本人ではなく、その所属機関となります。また、専門家へ外注することも可能です。

  • 外国人所属機関(会社、団体、学校など)の職員
  • 監理団体(技能実習生)の職員
  • 申請取次者の資格を持つ行政書士、弁護士(※これ以外に外注は不可)

在留申請オンラインシステムの利用可能なビザ申請

  • 在留期間更新許可申請(ビザの延長・更新)
  • ①と同時に行う再入国許可申請
  • ①と同時に行う資格外活動許可申請(個別許可は除く)

基本的にビザの延長(更新)をするときに利用することができると考えてください。外国から呼ぶときや、就労ビザへの変更時などは、従来通り入管に書類を持参して申請をします。

また、再入国許可申請は1年以上日本を離れる予定がある場合、資格外活動許可申請は留学生などが週28時間のアルバイトの許可が欲しいときに申請することになります。

在留申請オンラインシステムの対象となるビザ(在留資格)の種類

残念ながら全ての外国人が対象とはなっていません。どこかに所属することが前提となるビザが対象となりますが、対象となるビザの中でも対象外の範囲が設けられており、一部の企業や学校に所属している外国人のみとなります。

例えば、一般的な就労ビザである在留資格「技術・人文知識・国際業務」はカテゴリー1、2の会社等しかオンライン申請は利用できません。会社規模が小さく従業員が少ない企業が技術・人文知識・国際業務ビザを持つ従業員に代わってオンライン申請はできないんです。

基本的に、「上場企業などの審査が緩くなる企業・または公的機関に在籍する外国人」「信用度の高い学校に在籍する留学生」を対象としているのです。

また、そもそも対象外となるビザ(在留資格)は、外交ビザ、特定技能ビザ、短期滞在ビザと、身分系ビザと呼ばれる配偶者ビザ、定住者ビザ、永住者ビザです。特定技能ビザは定期的に報告が必要な制度になっているのでオンライン申請ができてもおかしくないのですが…今後対象者を拡大するとされていますので期待しましょう。

■対象となるビザ(在留資格)一覧 ※詳細はこちら

  • 全ての外国人が対象:公用、法律・会計業務、医療、介護
  • カテゴリー1、2に所属する外国人が対象:経営・管理、研究、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、技能
  • 一部の外国人が対象:教授、芸術、宗教、報道、高度専門職1号、教育、興行、技能実習、文化活動、留学、研修、家族滞在、特定活動の一部

在留申請オンラインシステムを利用できる機関の要件

このシステムを利用する前に事前登録が必要ですが、下記の要件を全て満たす必要があります。

①オンラインでの受付の対象となる外国人の所属機関であること

②過去3年間の内に、複数回の在留資格認定証明書交付申請、在留期間更新許可申請又は在留資格変更許可申請等の在留関係諸申請の手続を行っている こと

③所属機関又はその役員の方が出入国又は労働に関する法律の規定により罰金以上の刑に処せられたことがある場合は、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過していること

④役員の方が禁錮以上の刑に処せられたことがある場合、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過していること

⑤過去3年間、外国人を適法に雇用又は受け入れていること

⑥過去3年間、所属機関が在留資格を取り消された外国人の当該取消しの原因となった事実に関与したことがないこと

⑦所属機関が外国人の受入れの開始、終了等の届出(注1)を行っていること。なお、外国人労働者の雇入れ、離職時に氏名、在留資格、在留期間などを確認し、ハローワークに届け出ることを義務付けられている事業主は、その届出(注2)を行っていること
(注1)入管法第19条の17に基づく所属機関による届出
(注2)労働施策総合推進法第28条第1項に基づく外国人雇用状況の届出

⑧利用申出の受付の際に提出させる誓約書(別記第2号様式)による誓約を行っていること

⑨利用申出の不承認歴がある場合には、不承認となった理由が払拭されていること

重要なのは①と②です。

①はそもそもオンライン申請の対象者がいることですね。

②はオンラインシステムを利用する機関が自分で外国から呼び寄せたことが何度もあること、または申請取次者の資格を持って何らかのビザ申請を行っていることが必須とされています。つまり、行政書士などへビザ申請の外注をしている場合はこの要件を満たせません。

④~⑦は法令遵守しているかどうかです。申請をウェブにて簡略化できるようにするために最低限のふるいを設けたという内容です。

在留申請オンラインシステムの申請方法

詳細は今後開示されるマニュアルを見ていただきたいのですが、主な点をご紹介させていただきます。

  • ウェブブラウザはGoogle Chrome のバージョン「72」(その他は動作保証外)
  • 24時間365日申請可能
  • ビザの期限の3か月前から申請可能(在留期間が3か月以下の場合は在留期間のおおむね2分の1以上経過後)
  • 一括申請可能
  • 許可後の在留カードは郵送で受け取れる(または訪問)

在留申請オンラインシステムの定期報告義務

オンライン申請の利用には有効期限があり「1年」となっています。期限前に継続利用の届出を出すのですが、その時に定期報告をすることになります。

  • タイミング:利用開始から1年後(期限2か月前から可能)
  • 報告者:利用者(所属機関から代表して1名)または外注先の行政書士・弁護士
  • 提出物:定期報告書、在留申請オンラインシステム利用者リスト、所属している外国人リスト、課税・納税証明書(対象者のみ)、など
  • 方法:郵送または持参

在留申請オンラインシステムのメリット・デメリット

オンライン申請は便利なものですが、在留申請オンラインシステムは外国人本人以外がするものです。そのため、外国人本人の負担は大幅に軽減されますが、その分の負担が電子申請によって軽くなって別の人の負担になっています。そのため、この仕組みを利用する所属機関にとっては少なくない負担となります。

※以下、立場による負担、メリット・デメリットを解説しますが、表の中にある「課税・納税証明書の入手」は全ての外国人を対象とはしておりません。

外国人視点のメリット・デメリット

■外国人視点での負担

項目 従来 オンライン申請
申請書の作成 ×
課税・納税証明書の入手
写真の手配
手数料納付書作成 〇~△
収入印紙の手配 〇~×
入管へ申請 ×
入管へ受取 ×

従来は全て自分で行っていたことが、会社や学校がしてくれることになります。特に申請書の作成や入管への訪問は大きな負担になっていましたので、外国人の方にとっては非常にありがたい仕組みですね。そして在留期限の時期の管理も所属機関が担うことになりますので、本人は言われるがままに手配したりサインするだけ。

非常にメリットのある仕組みとなっています。

所属機関のメリット・デメリット

■オンライン申請による所属機関の負担

項目従来 所属機関の負担
申請書の作成 ×
課税・納税証明書の入手 ×
写真の手配 ×
手数料納付書作成 ×
収入印紙の手配 ×
入管へ申請 × ×
入管へ受取 × ×
在留期限の管理 ×

デメリット

外国人の方にビザの申請は任せているという企業や学校は手間が増えることが大きなデメリットです。インターネットでの申請になりますので出入国在留管理局への訪問は不要ですが、外国人の在留期限の管理、各書類の手配等の時間・労力を割くことになりますし、手数料を本人負担にさせなければ金銭的な負担も生じます。

メリット

一方のメリットは離職率低下です。これには2つの視点があり、ビザ申請の手間を企業側がすることで福利厚生の一環となり、外国人従業員の満足度が高まることで離職を防ぐという視点と、ビザ不許可による退職リスクを最小限にとどめることができるという視点です。

ビザの変更や延長(更新)は外国人本人が申請することになっていますので、多くの企業では本人に任せっきりです。一方で、従業員を大切にしている企業は本人に任せるのではなく、外部の行政書士などへ依頼する傾向があります。後述する不許可リスクという意味もありますが、優秀な外国人を自社にとどめるための施策という意味もあるそうです。

ビザ不許可については、全くの0にすることはできません。会社や学校が知らないところで入管法違反や犯罪を犯していれば不許可になり得ます。しかし、会社や学校がビザの管理をすることで、更新のし忘れやちょっとした行き違いでの申請不許可などは防ぐことができます。ビザは日本に住む外国人にとって「命の次に大事なもの」という表現もされますが、更新手続きをうっかり忘れてしまい有効期限を過ぎてしまう方も一定数います。有効期限(在留期限)を過ぎてしまうと不法滞在(オーバーステイ)になり、もしそうなってしまうとビザが無いということで雇用継続ができなくなる可能性が高いです。採用コスト・教育コスト等を考えれば、多少のコストを払ってでも自社でビザの管理をするメリットは存在します

また、学校としても、留学生がビザ更新忘れで留学ビザを失ってしまうと日本で学んでもらうことはできなくなりますので、顧客の流出・売上の低下を招くことになりますので、それを防ぐというメリットは大きいと思います。

注意点

在留申請オンラインシステムは全ての外国人が利用できるわけではありませんので、その区別が大変になります。

また、課税・納税証明書の提出も全ての方が対象ではありませんので、同じく区別が大変です。

外部委託をする場合のメリット・デメリット

■外部委託した際の所属機関の負担

項目従来 所属機関の負担
申請書の作成 ×
課税・納税証明書の入手 △~×
写真の手配 △~×
手数料納付書作成 △~×
収入印紙の手配 △~×
入管へ申請 × ×
入管へ受取 × ×
在留期限の管理 ×

※「従来」は所属機関が在留申請オンラインシステムを活用する場合

デメリット

外部委託をする場合のデメリットはコスト増加です。労力・時間を外注=外部へ転嫁するということですので、ある程度は仕方がありません。また、全てを外注することは難しく、入退社情報を外部先へ共有したり、外部委託先と外国人との橋渡しもある程度必要になります。

メリット

メリットは時間・労力の削減と更なるリスク低減を図れるということです。

時間・労力の削減は当然ですが、外部委託先との契約によっては課税・納税証明書の入手等も依頼可能で、上記の表の「所属機関の負担」も限りなく0にすることも可能です。ただ、外国人の語学力や個々の性格・進捗管理等の観点から、ある程度は所属機関の負担を残すべきとも個人的には考えています。

また、「所属機関視点のメリット・デメリット」で挙げた注意点(オンライン申請の対象者の区別、課税・納税証明書の入手の有無の区別)は外注先が判断することになりますので、自社であれこれ悩む必要もありません。この点もメリットになるかと思います。

かしもと行政書士法人へ依頼する場合

個別のお見積とさせていただきます。サービス内容・料金算出方法は下記の通りです。

◆サービス内容

  • 日本全国対応
  • 在留期限の管理
  • 在留期間更新許可申請を無料代行
    • 課税・納税証明書の無料取得代行
  • その他申請代行の大幅値引き
  • ビザ・在留資格の無料相談(TEL、メール、対面)
    • 対面の場合、基本的に弊所でお願いします。遠方については別途費用をいただきます。

◆料金算出方法・ご契約について

  • 月額基本料金+一人あたり月額〇○○円となります。
  • 所属外国人の在留期間に応じて料金を算出します(短ければ高く、長ければ安くなります)。
  • 所属外国人の人数を毎月見直し、料金に反映させます。
  • 最低契約期間は1年、以後毎月自動更新とします。
  • 関西以外(大阪出入国在留管理局管轄外)の所属機関様にはオンライン申請の利用届出のための遠方料金が別途必要となります。

おわりに

待望のオンライン申請がスタートするものの、中規模以上の企業や公的機関(カテゴリー1、2)が対象となっている等、対象者となる外国人はまだまだ少ないです。特定技能ビザも2019年4月時点では対象外となっています。外国人本人は利用できませんしね。

しかし、入管への2回の訪問が不要になるなど、申請側としても時間・労力を大幅に削減できますし、入管側としてもある程度自動処理が可能になるでしょうから審査時間の短縮も期待できます。

今後、この制度の対象となる外国人は拡大していくと思います。しかし、外国人本人が利用できないこと、ある程度の規模の所属機関にしか認めていないことからも分かるように、信頼性の担保という意味で際限なく拡大というのは難しいとも感じています。

難しい問題ですが、今後ますます増える外国人に対応するために効率の良い仕組みの構築を続けていただきたいと思います。