留学ビザを持った外国人を採用した場合、ビザの変更手続きをしなければ会社で働いてもらうことはできません。

このビザの変更手続き、在留資格変更許可申請というのですが、留学生本人が手続きする申請です。

しかし、申請するためには会社としても書類を用意してあげる必要があり、また、そもそも留学生もビザの手続きになれているわけではありません。

そのため、できる限り会社側がサポートしてあげるべきですね。

会社としては、次の2点の視点でサポートをしましょう。

①在留資格「留学」から就労ビザへ変更するまでの流れを留学生に伝える

②会社側で用意する・用意したほうがいい書類を手配する

①在留資格「留学」から就労ビザへ変更するまでの流れを留学生に伝える

留学生本人がビザの仕組みをよく分かっていないことも多いですので、まずはビザ変更の流れを伝えておきましょう。

学校を卒業・退学した後に留学ビザのままでは働くことはできませんので、就労ビザに変更できるまでは勤務不可です。変更手続きをして許可がおりてから勤務開始となりますので、入社予定日が変更になる可能性があることを伝えておきましょう。

また、資格外活動許可を得てアルバイトをされている学生も多いですが、卒業後は資格外活動許可をしてはいけません。このことが発覚した場合、就労ビザへの変更ができなくなる可能性がありますので注意喚起が必要です。

それと、ビザの変更や更新は外国人本人が入国管理局へ出向いて手続きしなければなりませんので、会社に任せっきりにはできないことも伝えておきましょう。

「やることリスト」を作成してあげるといいかもしれません。その場合、
「申請は〇月○日までにすること」 のように期限を決めた方がいいですよ。

また、仮に就労ビザへの変更ができなかった場合は雇用できないことも伝えておくべきです。

②会社側で用意する・用意したほうがいい書類を手配する

就労ビザへの変更は、入国管理局に「在留資格変更許可申請」します。

会社の規模によって申請に必要な書類が変わりますので、まずは会社が入管法でどの区分に入るかを確認しましょう。

こちらの記事では、在留資格:「技術・人文知識・国際業務」を想定しています。その他の就労ビザでは必要書類が変わりますのでご注意ください。

会社のカテゴリー

就労ビザの手続きは、会社の規模によって異なります。入管法では4つのカテゴリーに分けられていますの、まずは下表で確認しましょう。

区分(所属機関)
カテゴリー1
①日本の証券取引所に上場している企業
②保険業を営む相互会社
③日本又は外国の国・地方公共団体
④独立行政法人
⑤特殊法人・認可法人
⑥日本の国・地方公共団体の公益法人
⑦法人税法別表第1に掲げる公共法人
カテゴリー2前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収票合計表の源泉徴収税額が1,500万円以上ある団体・個人
カテゴリー3前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体・個人(カテゴリー2を除く)
カテゴリー4左のいずれにも該当しない団体・個人

会社が用意しなければならない書類:カテゴリー1、2

会社がカテゴリー1、2に属する場合、申請書類の必須書類はかなり少ないです。

会社が用意しなければならない書類は下記のいずれか一点です。

カテゴリー1四季報の写し
日本の証券取引所に上場していることを証明する文書(写し)
主務官庁から設立の許可を受けたことを証明する文書(写し)
カテゴリー2前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)

どのカテゴリーに属しているかを証明する書類が必要ということですね。

四季報の写しは誰でも用意することができますが、会社側で用意してあげた方がベターです。

会社が用意する書類:カテゴリー3、4

多くの中小企業やベンチャー会社はカテゴリー3、4に属することになります。

会社がどのカテゴリーに属しているかを示す書類の他、入管法に即した労働契約であること、外国人を継続して雇用できるだけの安定性・継続性が会社にあることを示さなければなりません。

特に新設の会社は今後の収支予定についても提出が必要となりますので、しっかりとした準備が必要です。

また、登記事項証明書は誰でも法務局で取得できますが、学生、ましてや外国人の方にとっては取得方法がよく分からないと思いますので、会社が用意してあげましょう。

会社が用意する書類は以下の通りです。

カテゴリー3前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
カテゴリー3、4共通雇用契約書
登記事項証明書
・勤務先等の沿革、役員、組織、事業内容(主要取引先と取引実績を含む。)等が詳細に記載された案内書
カテゴリー4・直近の年度の決算文書の写し。新規事業の場合は事業計画書
前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出できない理由を明らかにする次のいずれかの資料

(1)源泉徴収の免除を受ける機関の場合
外国法人の源泉徴収に対する免除証明書その他の源泉徴収を要しないことを明らかにする資料 1通
(2)上記(1)を除く機関の場合
 ア 給与支払事務所等の開設届出書の写し
 イ 次のいずれかの資料
(ア)直近3か月分の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(領収日付印のあるものの写し)
(イ)納期の特例を受けている場合は、その承認を受けていることを明らかにする資料

本人が用意する書類

卒業証書など、外国人本人が所持している書類は当然本人が用意します。

また、カテゴリー1、2については大学卒業に関する書類は不要で、専門学校の場合のみ必要とされています。

一方のカテゴリー3、4については、外国人の学歴や実務経験について証明する書類が必須となっています。留学ビザの外国人を雇用する場合は卒業証明書ですね。

全カテゴリー共通写真(縦4cm×横3cm) 1葉
※申請前3か月以内に正面から撮影された無帽、無背景で鮮明なもの。
※写真の裏面に申請人の氏名を記載し、申請書の写真欄に貼付してください。
・専門学校を卒業し、専門士又は高度専門士の称号を付与された者については、専門士又は高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書 1通
カテゴリー3、4申請人の学歴及び職歴その他経歴等を証明する文書 (下記両方必要)
履歴書
学歴又は職歴等を証明する文書

カテゴリー3、4の「学歴又は職歴等を証明する文書」とは、就労ビザで問われる学歴・実務経験要件と仕事内容をどのような形で満たすかで変わってきます。

学歴なのか、職歴なのか、資格なのかという具合にです。

「学歴又は職歴等を証明する文書」は下記のいずれかを用意しましょう。

学歴で要件クリア大学等の卒業証明書又はこれと同等以上の教育を受けたことを証明する文書。なお、DOEACC制度の資格保有者の場合は、DOEACC資格の認定証(レベル「A」、「B」又は「C」に限る。)
実務経験で要件クリア在職証明書等で、関連する業務に従事した期間を証明する文書(大学、高等専門学校、高等学校又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に係る科目を専攻した期間の記載された当該学校からの証明書を含む。)
資格で要件クリアIT技術者については、法務大臣が特例告示をもって定める「情報処理技術」に関する試験又は資格の合格証書又は資格証書
国際業務を実務経験でクリア外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事する場合(大学を卒業した者が翻訳・通訳又は語学の指導に従事する場合を除く。)は、関連する業務について3年以上の実務経験を証明する文書

在学中の外国人は卒業証明書が無いので卒業「見込み」証明書を提出

留学ビザの方の多くは、申請時は卒業していないことがほとんどだと思います。この場合は卒業証明書は学校から発行されません。まあ卒業していないので当然ですよね。

そこで、就労ビザへの変更申請時には卒業見込み証明書を提出します。学校に問い合わせてみましょう。

ビザ変更の審査は卒業証明書を提出せずとも完了します。ただし、最終的に卒業したことを証明しなければなりませんので、ビザの変更許可通知を受け取ったら卒業証明書を入国管理局に持参します。卒業証明書と引き換えに就労ビザの在留カードを受け取るという形ですね。

また、留学ビザから就労ビザへの変更は入社3か月前から可能です。しかし、日本の会社は4月入社が一般的のため、春先は就労ビザの変更が集中することになってしまいます。そこで、申請を分散させるため12月から申請が可能になっています。

卒業証明書が発行されるまでビザ申請を待っていると入社までに就労ビザへの変更が間に合いません。できるだけ早いタイミングで申請しましょう!

ビザ専門の行政書士に依頼すると確実で効率がいい

外国人を雇用するためには在留資格の問題は避けて通れません。手続きに手間がかかることはもちろんですが、入管法という会社運営とは全く関係のない法律の知識も必要となるため労力も必要です。そして、採用したものの在留資格の変更ができずに雇用できないというリスクもあります。

そこで、採用活動の段階から専門家の協力を仰ぎ、確実な雇用を目指してはいかがでしょうか。就労ビザへ変更できなければ採用活動に費やした費用も労力も時間も全て無駄になってしまいますしね。

また、就労ビザの申請は会社が手配した方がいい理由については別記事で詳しく説明していますのでご参考にしてくださいね。

また、就労ビザは当然に変更できるものではなく、様々な要件を満たさなければなりません。

こちらの記事もご参考にしてくださいね。