日本の労働市場において「外国人労働者」というフレーズを見た時、どういうイメージを持たれるでしょうか?

労働環境がブラックなイメージを持たれる方も多いかもしれません。

ブラックな労働環境といえば、「きつい・汚い・危険」の3K労働です。近年は「帰れない・厳しい・給与が安い」という新3Kという言葉も生まれていますが、この言葉を連想する方もいらっしゃると思います。総じて、日本人が就きたくないような仕事をしているイメージをされている方が多くいらっしゃると思います。

今回は、雇用側として気になる「給与負担」について解説していきたいと思います。

「3K」「新3K」で働く外国人労働者って何者?

確かに、募集しても日本人が集まらないという理由で外国人の方が多く働いている職種・業界はあります。

ただし、外国人なら誰でもその職種・業界で働けるわけではありません。

なぜなら、外国人はビザ(在留資格)のハードルがあるからです。ビザの種類によって働くことができないというケースがあります。

コンビニ、ファミレス、ファーストフード店などのバイト・パート形態の雇用

身近なところで言えばコンビニやファミレス・ファーストフード店です。地方ではそれほどではありませんが、都心部では数年前からこの傾向が顕著です。

ここではバイト・パートでの雇用という前提で考えてください。

これらで働く外国人の方は、身分系ビザまたは留学ビザを持っているはずです(留学ビザの方がほとんどだと思います)。

身分系ビザとは、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「永住者」、「家族滞在」、「定住者」という名前の在留資格の総称ですが、いずれの資格も仕事ではなく身分(ステータス)によって日本に住むためのビザです。日本と仕事以外で繋がりがある方が取れるビザとも言い換えれます。

身分系ビザや留学ビザは就労制限が無い、又は緩和される手続き(資格外活動。就労時間の制限がある場合もあり。留学生の労働時間は週28時間以内に制限など)が用意されていますので、日本人とほぼ同じように就職やバイトをすることができます。

つまり、一応のスタートラインは日本人と同じですので、後は雇用側が誰を採用するかという点に絞られます。

好条件・人気のある仕事は母数の関係上、また日本人を雇いたいという雇用側の希望によって早々に日本人が採用されますが(外国人を雇用したいというケースを除く)、3K、新3Kの労働環境であれば応募人数が少ないがために外国人の方を雇用する他ないという状況が生まれてきているのです。

雇用側が支払うお金については、募集時に金額を明記しているはずですので、日本人と外国人との間に賃金の違いは生まれにくいです。

農場・工場etc…

残念ながら劣悪な労働環境の場合が多く、職場から逃げ出す外国人が後を絶ちません。長時間労働で休みも少ない、しかも低賃金。閉鎖的な環境でイジメやハラスメントetc…

これらの場所で働いている外国人の方の多くは、「外国人技能実習生」です。

外国人技能実習生が働ける業種はこちら

  • 農業関係(2職種6作業)
  • 漁業関係(2職種9作業)
  • 建設関係(22職種33作業)
  • 食品製造関係(9職種14作業)
  • 繊維・衣服関係(13職種22作業)
  • 機械・金属関係(15職種27作業)
  • その他(12職種24作業)

(出展:JITCO

いわゆるブルーカラーの仕事になりますね。とは言え、技能実習生というビザは日本の技術を本国に持ち帰るためのビザですので、「手に職」系の職場で働くことになります。

技能実習制度の趣旨は「特定の技能を身につけて帰国してもらう」という制度です。特に日本の技能・技術・知識を開発途上地域への還元を趣旨とし、開発途上国のための「人づくり」という国際協力の一環でという位置付けです。基本は日本滞在期間は1年、試験に合格すれば3年、最大で5年間働くことができますが、いずれ帰国します。期間限定の労働力とも言えますね。

また、この制度は日本で働きたい・学びたい外国人を斡旋する海外の機関から日本の機関(管理団体)に派遣され、管理団体が指定する企業等で働くことになります。そのため、日本の企業が技能実習生を雇用したいと考えた場合は日本の機関(管理団体)に問い合わせすることになります。

雇用側としては低賃金で雇用できるかが気になるところだと思いますが、技能実習生の場合は「最低賃金法に定める最低賃金額以上の額を支払うこと」とされていますので、都道府県ごとに定められてた最低賃金で雇用できますが、技能実習生の航空券や手続き費用、日本での滞在費用なども雇用側の負担となります。

一般的に技能実習生を雇った場合、約17万円/月が雇用側の負担となります。
確かに安いです。賞与や退職金も不要ですので、技能実習生=低賃金で雇用できるとも言えます。

ただし、技能実習生の雇用を検討してから実際に雇用が始まるまで7ヶ月程度を要しますので、雇用側には中長期的な視点が必要です。また、日本語堪能というケースは少なく、文化の違いもありますので、これらの点をどうカバーするかも雇用側はよく考える必要があります。

また、雇用できる職種・業界が決まっていることにも注意が必要です(上述の職種を参照)。ただし、日本政府は人口減少に伴い外国人労働者の受け入れに舵を切り出していますので、今後は対象となる職種・業界は広がる見込みです。

話を戻しますが、冒頭に「劣悪な環境」とお伝えした通り、一部の心無い雇用者が制度を悪用したばかりに、技能実習生を奴隷扱いしているという国際批判があります。最低賃金・残業代未払い・過度の労働時間etc…そして、耐えきれなくなって失踪。技能実習生は転職できませんので、失踪=技能実習生としての資格を失うことになりますので不法滞在となってしまいます。

技能実習生を雇い入れることを検討される場合は、法の遵守と外国人の方の人生についてもよく考えていただきますようお願いします。

正社員として雇用

いくつかパターンがあるのですが、就労ビザから見ていきます。
就労ビザとは、仕事目的で日本に住むことが認められた外国人の方が取得できるビザです。

就労ビザには種類がいくつかあるのですが、代表的なものに「技術・人文知識・国際業務ビザ(技人国ビザ)」「技能ビザ」があります。

技人国ビザはいわゆるホワイトカラー職種に限って認められるビザです。
技能ビザは料理人や職人などが当てはまります。

これらのビザは取得要件が厳しいため、誰でも取れるというわけではありません。
例えば、技人国ビザであれば大学等の卒業&専攻と関係のある職種でしか働けない、技能ビザであれば実務経験10年などの条件があります。また、賃金については他に雇用している日本人と同等にしなければなりませんので、安い労働力とは言えないですね。

次に、身分系ビザを持っている場合。永住ビザ、配偶者ビザ、定住者ビザを持っている外国人であれば就労制限はありませんので、労働法などが許す範囲の中で雇用条件は自由に決めることができます。そういった意味では低賃金で雇用できる可能性はあります(外国人の方が働きたいとと言うかどうかは別問題ですが)。

家族滞在ビザを持っている場合は、資格外活動許可を得ていればアルバイト可能です。ただし、就労制限(週28時間)がありますので、これを守ること必要があります。留学生や他の在留資格でも資格外活動許可を得ていれば同様です。

風俗業界

外国人の不法滞在の温床になっていることは否めませんが、きちんと正規のビザを持って働いている方も大勢いらっしゃることはご理解ください。

いわゆる風営法が適用される業界で働くことができる外国人のビザは以下の通りです。

  • 永住ビザ
  • 配偶者ビザ(日本人の配偶者等、永住者の配偶者等)
  • 定住者ビザ
  • 興行ビザ

身分系ビザである永住ビザ・配偶者ビザ・定住者ビザは就労制限がありませんので、風俗業界でも働くことができます。

一方の興行ビザは就労ビザに分類されます。仕事のために日本に住むことが許可されたビザです。興行ビザはスポーツ選手やアーティストが日本で試合をしたりコンサートをするためのビザですが、小さなハコでのショー(ダンスや歌)の仕事でも該当します。
そのため、いわゆる「パブ」と言われるようなお店のステージに立ってショーを行うこともできますが、接待は禁止されています。

つまり、キャバクラなどのお店では横に女性が付きますが、これを一切禁止されているんです。興行ビザはあくまでも「ショー」でお金を稼ぐビザですので、接客等はできないとご理解してください。

また、風俗で働いている女性の姉妹や親戚などを短期滞在ビザで日本に呼び寄せて風俗で働くというケースもよくありますが、短期滞在ビザでは収入を得る活動は一切認められませんので不法就労となります。よくテレビ等で不法就労の摘発が取り上げられますが、認められた仕事以外に携わってしまっている、働くことができないビザ(短期滞在ビザなど)で仕事をしているからなんです。

ちなみに、賃金についてはお店の種類や色によると思いますので、私の方から言及することは特にありません。

おわりに

今回は外国人の賃金について焦点を当ててみました。

世界を見渡した場合、外国人=低賃金という数式はある程度は正解ではありますが、日本においては技能実習生以外は当てはまりにくいと言えます。しかも低賃金といっても日本人の場合と大差があるわけではありません。

そのため、外国人雇用を考える際には「安い労働力」という視点で考えるのはやめましょう。

「外国人だからこそできる仕事」「外国人特有の能力が欲しい」「日本人だと集まらない」といった理由から外国人雇用を検討してみてくださいね。