「住所要件」とは?
帰化申請が許可されるためには、住所要件を満たす必要があります。日本への定着性を測る基準の1つとして設けられた規定です。
国籍法の帰化条件の条文を見てみましょう。
引き続き5年以上日本に住所を有すること。
帰化するためには日本に一定期間以上住んでいなければなりません。その期間は5年以上と決まっています。また、3年以上の就労期間が必要です。
ただし、日本人と結婚したり両親と一緒に帰化する場合は住所要件が緩和される場合があります(簡易帰化)。
◆POINT
いつからいつまで?
帰化申請の直近5年間を指します。10年前に5年以上日本に住んでいたケースは要件を満たしていないことになります。
引き続き5年間とは?
「引き続き」は連続して5年以上日本に住んでいることを要求しています。日本に留学4年、海外で1年間就職、その後来日して就労ビザ3年の場合、累計では日本在住7年となりますが、1年間の海外生活を挟んでいますので連続して3年しか日本に住んでいませんので、住所要件を満たしていません。
一方、短期間の海外旅行や出張などは大丈夫です。一時的に外国に行っているだけで住所は日本にあるいうことで連続期間に含まれることになります。
ただし、一時的な出国した場合、その「期間」に注意しなければなりません。長期出国や1年間の累計出国日によって連続期間がリセットされてしまい、日本帰国後に連続期間が0日からスタートすることになります。
直近の就労期間3年が必要
「引き続き5年」であれば大学留学生はすぐに条件を満たせますが、実はまだ条件があります。就労期間が3年以上必要になりますので、留学生は就職して3年経過しなければなりません。また、アルバイトは就職している期間とは見なされませんので、正社員、契約社員、派遣社員等でなければなりません。
就労期間に対する特例:日本在留10年
日本在住期間が10年以上になれば、先ほどの就労期間3年に満たなくても帰化申請が許可される可能性があります。ただし、収入が無いでしょうから生計要件を満たせない可能性が高くなります。
住所要件が短縮(引き続き5年間→3年or1年or0年)に短縮されるケース
配偶者が日本人の場合や、本人または両親が日本生まれの場合など、日本との縁が特に深い方は住所要件が緩和されて必要な日本在住歴が短縮されます。また、就労期間も原則問われません。このような特例を利用して帰化することを簡易帰化と呼びます。
また、0年と言っても日本に住んでいることは必要です。日本に住居を構えてすぐに帰化申請ができるという意味です。
3年、1年に短縮と表現していますが、帰化申請日から遡って3年、1年(引き続き3年、引き続き1年)ですので、過去の居住歴が加味されるわけではありません。
ここでは条件毎に説明していきます。
元日本人の子供の帰化申請
親が元日本人の場合、日本居住歴3年以上で帰化申請が可能です。ただし養子は不可です。
例えば元日本人の親と海外で暮らしていたところ、日本に移住して3年経てば帰化申請することができます。
第六条(国籍法 一部改変)
次の各号の一に該当する外国人で現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が住所要件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
一 日本国民であつた者の子(養子を除く。)で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有するもの
日本生まれ・親が日本生まれの帰化申請
日本生まれの外国人の方は、日本居住歴3年以上で帰化申請が可能です。
また、両親もしくはどちらか一方の親も日本生まれの場合は日本在住歴0年で帰化申請可能です。実父母に限ります。
特別永住者の方はこの条件に当てはまりますね。また、日本ですれば出産すれば、その子供がその後海外で暮らしたとしても再来日時には3年で帰化申請することができます。
第六条(国籍法 一部改変)
次の各号の一に該当する外国人で現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が住所要件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
二 日本で生まれた者で引き続き三年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの
日本人の子の帰化申請(親が日本人 or 家族一緒に帰化申請)
日本人の子は住所要件がありません。親が既に日本人に帰化していたり、家族一緒に帰化申請する場合には住所要件そのものが問われないということです。また、子は特別養子を含みます。
「日本人の子」は大別すると以下の3つです。
- 親が日本人(親が日本人だが生まれた子供の国籍を外国籍としたケース)
- 親が元外国人(既に帰化しており、自動的に日本人の子になったケース)
- 家族一緒に帰化申請(親が許可されるのであれば必然的に日本人の子になるケース)
第八条(国籍法 一部改変)
次の各号の一に該当する外国人については、法務大臣は、その者が住所要件、能力要件及び生計要件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
一 日本国民の子(養子を除く。)で日本に住所を有するもの
日本人の養子の帰化申請
日本人の養子は住所要件緩和され、日本居住歴一年以上に短縮されます。ただし、養子縁組のタイミングが本国法(母国法)で未成年の時に限ります。
また、前項の「日本人の子の帰化申請」と同じように、外国人の養子という身分であっても外国人親が先にもしくは同時に帰化申請をすれば、自動的にその養子は日本人の養子として取り扱われます。
第八条(国籍法 一部改変)
次の各号の一に該当する外国人については、法務大臣は、その者が住所要件、能力要件及び生計要件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
二 日本国民の養子で引き続き一年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時、本国法により未成年であつたもの
日本人と結婚した方の帰化申請
日本人と結婚した外国人の方も住所要件が短縮されます。
3年以上日本に住み続けていること
日本に住み始めて3年以上経ってから日本人と結婚すれば、すぐに帰化申請することができます。
例えば25歳で来日し、28歳で日本人と結婚すれば帰化申請が可能になります。
(日本在住歴3年、身分:日本人の配偶者、結婚歴0年)。
第七条(国籍法 一部改変)
日本国民の配偶者たる外国人で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が住所要件及び能力要件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
結婚して3年経過、かつ、1年以上日本に住み続けていること
日本人との結婚歴が3年以上になれば、日本に住み始めて一年以上経過した段階で帰化申請することができます。
例えば30歳で日本人と結婚後に40歳で来日。41歳で帰化申請が可能になります。
(日本在住歴一年、身分:日本人の配偶者、結婚歴10年)
第七条(国籍法 一部改変)
日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から三年を経過し、かつ、引き続き一年以上日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が住所要件及び能力要件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
その他のケース
次の2パターンに該当する場合も住所要件が短縮されます。
- 元日本人(元々外国人の方で、一度日本に帰化した方は除く)
- 日本生まれで出生時から無国籍の方が3年以上日本に住み続けた場合
第八条(国籍法 一部改変)
次の各号の一に該当する外国人については、法務大臣は、その者が住所要件、能力要件及び生計要件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
三 日本の国籍を失つた者(日本に帰化した後日本の国籍を失つた者を除く。)で日本に住所を有するもの
四 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き三年以上日本に住所を有するもの