素行要件とは

帰化申請が許可されるためには、素行要件を満たす必要があります。大雑把に言えば法律を守っていること。

国籍法の帰化条件の条文を見てみましょう。

素行が善良であること。

法律上は一言で済まされていますが、奥の深いこの条文。平易な日本語に直せば「普段の行いが問題ないこと」ですが、この言葉の中に納税の義務年金の加入義務の履行と犯罪を犯していないことの3つの要件が含まれています。

税金をしっかり納めていること

所得税・住民税・法人税などです。会社役員の方は会社の納税状況も加味されます。もし、未納があれば帰化申請をしても許可されませんので、未納がある場合は支払いを済ませてから帰化申請をすることになります。また、税金関係は会社員と個人事業主/会社経営者で異なります。

会社員

→サラリーマンは税金関係を給料天引きされている場合がほとんどですので問題となる可能性は低いですが、住民税は給料から控除されておらず自分で支払うことになっている会社も多く、この場合は市役所から個人宛に請求書が届きますので支払ってください。もし未納となっている場合は支払ってしまえば大丈夫です。

個人事業主

→個人事業主は確定申告をして個人税のみだけでなく事業税の支払いも発生します。

会社経営者

→会社経営者はご自身のみだけでなく会社の納税状況も重要になります。

配偶者について

→配偶者がいる場合は、配偶者も未納がないことが必要です。また、扶養に入れている場合もあると思いますが、扶養に入ることができる条件を満たしていない場合は扶養を外して免除されていた税金を支払うことになります。

被扶養者について

→配偶者以外に扶養している親族がいる場合、適法な被扶養者でなければなりません。以前は国外の被扶養者の審査は緩かったのでバリバリ働いているような親族まで扶養に入れている方もいましたが、現在は扶養に入れるための審査が厳しくなったので適法な被扶養者であると思います。ただし、死亡した方を扶養し続けている場合は帰化申請で隠し通すことはできませんので、こうしたケースは必ず修正申告して正しく税金を納めてください。また、扶養人数が多いと扶養するための出費が必要ということで生計要件を満たせない可能性が高くなることにも注意が必要です。

年金に加入・支払いに問題が無いこと

以前は要件とされていなかった項目です。2012年7月以降は法改正によって年金加入・支払いが要件として加わっています。

年金は税金よりも厳しく、未納があっても遡って支払うだけではダメです。1年以上、継続して支払い遅延をせずに加入していることが必要ですので、現在、年金の滞納がある方や未加入の方は最低1年後にしか帰化申請をすることができません。

国民年金の月額費用は、平成30年度(2018年度)は「16,340円」、平成31年度(2019年度)は「16,410円」です。年間で約20万円です。

会社員(給料天引きあり)

→会社員で厚生年金を給料天引きされている方は問題ありません。

会社員(給料天引きなし)

→会社員で厚生年金を天引きされていない方は、厚生年金に加入しておらず国民年金に加入しなければならない方です。

無職・アルバイト(被扶養者ではない場合)

→国民年金に加入しなければなりません。

無職・アルバイト(被扶養者の場合)

→扶養者が加入している厚生年金に加入するか、国民年金に加入していることなっています。

個人事業主

→国民年金に加入しなければなりません。

→従業員5名以上の雇用がある場合は厚生年金に加入しなければなりません。

会社経営者

→会社として厚生年金に加入しなければなりません。従業員も厚生年金に加入させなければならないということです。

犯罪を犯していないこと

警察のお世話になった方は帰化申請が難しくなります。ただし、犯罪の程度にもよります。

ほとんどの方は前科がつくようなことは無いと思いますが、身近なところで言えば交通違反も違法行為ですので注意して下さいね。

交通違反

車を運転する方は交通違反に気をつけてくださいね。審査では5年間の交通違反状況を確認されます。軽微なものが5回程度なら問題ありませんが、10回以上ある方は法の遵守精神が無いとみなされ帰化できない可能性が高いです。

無免許運転や飲酒運転など重い交通違反がある場合は当面の間は帰化できないと考えて下さい。

軽微な違反が多い方や重い交通違反がある方は数年時間を置いてから帰化申請に臨むことになりますね。

 

犯罪

前科・犯罪歴がある場合は内容にもよりますが当面の間は帰化が認められません。

また、本人が前科を持っていると思っていても実は前科ではないこともあります。逮捕=前科と思われている方もいると思いますが、裁判で有罪判決されたものを前科として考えます。

ただし、万引き等の軽犯罪は訴訟にまで至らないケースが多いですが、前歴がつきます。前歴は警察に保管されているデータです。前歴がついている場合は内容にもよりますが帰化の許可を難しくしていると考えてくださいね。

また、特別永住者は他のビザの方に比べて犯罪歴については優遇されています。というのも、他のビザの方は犯罪歴があると在留資格の更新・延長が難しく、帰化の前に日本に住むことそのものが難しくなるからです。