国際結婚を控えた日本人女性Aさん、夫となるBさんの配偶者ビザ(日本人の配偶者等)の申請代行を複数の行政書士事務所へ相談するも、難しいと断られていたそうです。

そうした折に弊所にお問い合わせいただいて申請代行のご依頼を受任したのですが、ご連絡をいただいた時点からご本人たちは諦めモード。弊所の方で無事に配偶者ビザが取得できたのでハッピーエンドとなりましたが、「もしこちらでも断られていたら海外移住したかもしれない」と後からお聞きしました。

日本人と結婚すれば、配偶者ビザは必ず取れる?

日本で働くためのビザである就労ビザは、本人の学歴など在留資格を取得するためのハードルがあり、仕事内容の縛りがあるなどの制限があります。一方で、日本人の配偶者等などの配偶者ビザや定住者ビザ、永住ビザは就労制限が無く日本人と同じように働くことができますので、偽装結婚をしてでも狙われている在留資格です。

そのため、審査側も偽装結婚を念頭に審査します。「年の差が大きい」「国際結婚を何度もしている」「交際歴が短い」「会っている回数が少ない」「同居していない」などの状況であればに厳しく審査することになります。

また、収入金額や収入の有無、犯罪歴など、多角的・総合的に審査・判断されることになります。

つまり、結婚が成立したとしても配偶者ビザが取れるかは別問題ということです。

在留資格の申請代行を請け負う行政書士の判断について

ビザの申請代行を生業にしている行政書士は、申請取次者として入国管理局に届出をしています。これは1日がかりの講習を受けて簡易な試験を合格した方です。行政書士資格に加えてビザの申請代行ができる許可を持っている行政書士と言えます。

他の行政書士と比べて入管法に詳しいのは当然ですが、それでも、ビザの申請の許可・不許可について全ての案件を的確に判断することは難しいです。なぜなら、お客様の国籍・状況・将来設計などなど、同じ状況にいらっしゃる方はあまりいないからです。

「AとBの条件は満たしているが、Cの条件がクリアしていないから許可されない」「Cの条件は満たしているが、AとBの条件はクリアしていない。でも許可される」というケースもあり、判断が難しいのです。

また、審査基準は完全に公開されているわけではなく、入国管理局の裁量による部分も多くあります。総合的に判断するということですね。総合的な判断は主観も混じりますので、同じ条件にもかかわらず許可になるケース、ならないケースも発生しています。そのため、行政書士の判断はある程度の確度はあるものの、100%ではありません。

レアなケースであればあるほどに許可・不許可の行政書士の判断精度は落ちることになりますので、難しそうなケースの場合は1度断られても諦めずに複数の事務所へお問合せしてみてください。

行政書士へ電話・メール相談では確定的な結論はでない可能性が高い

ビザの専門家でも簡単に判断できないとお伝えしましたが、私が請け負ったご夫婦のケースで考えてみます。

お二人は「配偶者ビザが不許可になると」と一般的に言われている事情を抱えていました。いろいろとお調べになったようで、ご本人もその問題を把握しています。そして、自分たちで申請は難しいと考え、在留資格を専門とする行政書士事務所へ「こういう状況なのですが、配偶者ビザは取れますか?」と電話やメールで問合せをします。しかし、問合せ先からの答えは「取れません」「取るのは難しい」でした。

行政書士からの回答がなぜこのようなものになってしまったかというと、「情報が少なくて分からない」からです。

電話やメールだけでは得られる情報は少なく、判断ができないことが多いです。また、「許可される」と判断したものの、お客様が問題と認識していなかったことが後ほど発覚して、実は許可要件を満たしていなかったということもありえます。後者は確認不足として専門家側が責められることですが、お客様視点で分かる問題点と専門家視点で分かる問題点は違いますので、短時間の簡単なやり取りだけでは判断は難しいんです。

行政書士への相談のコツと心構え

ビザの相談は、問題と考えていることを端的に伝えるのではなく、全体的な状況も伝えましょう。端的な質問だと、「それだと無理です」で終わってしまうかもしれません。全体的な状況を伝えていれば、「他の条件でカバーできます」というように自分では気づけなかったことを指摘してくれるでしょう。

また、可能であれば概要を伝えたうえで専門家と面談をしましょう。面談となれば相手のお顔も分かりますので、こちらとしてもお客様が何を不安に感じているか理解しやすく、質問に答えるだけでなく心理的負担を軽減できるような事実や経験談もお伝えしやすくなります。そして、何よりも時間をかけてお話ができますので、事細かく状況確認をすることが可能です。「書類を見てみないと判断できない」ということはもちろんありますが、専門家の判断の確度は一層高まります。

もちろん、資料があるとよりGoodです。お手元にあるものだと給与明細や在留カード、パスポート、通帳などですね。

「面談まですると押し売りが怖い」なんて意見もあると思いますが、そういう事務所はほとんどないと思います。皆さん法律の勉強をされてきた方ですし。付け加えていえば「イケイケ系」「オラオラ系」は見たことがありませんので、あまり不安に思わなくても大丈夫です。

「自分が考える問題点と、実際の問題点は必ず一致しない」ということをしっかりと認識ししておきましょう。