特定技能の受入れ現場では、登録支援機関が「申請書類もまとめて作ってくれる(作ってしまう)」運用が、半ば当たり前のように広がってきました。しかし2026年1月1日施行の行政書士法改正により、この“グレー運用”はかなり危険度が上がります。この記事では、「登録支援機関は本当に“完全に”書類作成できなくなるのか?」を、行政書士の視点で、実務で揉めやすいポイントに絞って整理します。

結論:登録支援機関は「書類作成ビジネス」を続けるのは難しくなる

2026年1月1日より、行政書士法第19条が下記内容へ変更されます。

<行政書士法第19条>行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。

こちらの条文は、書類作成は行政書士の独占業務であることを示しています(第一条の三は書類作成業務のこと)。

注目すべき箇所は「いかなる名目」という文言です。今回の法改正により、その名称を問わず行政書士以外が対価を貰って書類の作成をしてはダメということが明確になりました。

登録支援機関が自分たちで書類作成している場合、例えば毎月の支援料などで実質的に労務コストを回収しているのではと思います(さすがに「書類作成料」としては貰っていないですよね?)。しかし、このやり方は「いかなる名目」に抵触してしまい、違う名目で対価を得ていると見なされます。

※行政書士会の見解では、今回の改正法の施行日前であってもこうした行為があれば同条に違反することとしています。

現場で多い3つの誤解

ここでよくある誤解が、「登録支援機関は申請取次ができるのだから、書類も作っていいはず」というものです。しかし、“提出(申請取次)”と“作成”は別物です。

入管の申請等取次制度は、あくまで「本人が作成した申請書類を、本人に代わって提出等できる」という制度に過ぎません。つまり、登録支援機関ができるのは基本的に提出・受領などの事実行為であって、申請書の中身を作り込む「書類作成」とは切り分けて考える必要があります。

また、「作成料は取っていない。支援料の中に入っているだけ」という説明も、これからは通りにくくなります。前述のとおり“いかなる名目であっても”対価があるならアウトと整理される以上、支援契約の名目で書類作成の労務コストを回収していると判断されれば、行政書士法違反のリスクが残ります。

さらに怖いのは、「形式上は会社(受入れ機関)が作ったことにしている」ケースです。実態として、

  • 登録支援機関が申請書を入力・作成し、会社担当者は内容を理解しないまま押印する
  • 「この欄はこう書いてください」と登録支援機関が記載内容を実質的に決める
  • 申請理由書の文案(作文)を丸ごと用意する

といった運用になっていると、「作成主体は誰か」の説明ができず、調査が入った際に一気に苦しくなります。

実務上の落とし穴:問題は「作成料」だけではない

現場で一番揉めるのは、次の2点です。

1つ目は、対価の受け取り方です。作成料という名目でなくても、支援料・手数料・コンサル料など、実態として書類作成の対価が含まれていれば「報酬」に該当し得ます。

2つ目は、“作成”の線引きです。単なる事務連絡・翻訳・本人や企業が書いた内容の整理にとどまるのか、あるいは申請書の記載内容を組み立て、理由書を作り、全体のストーリーを作っているのか。後者に寄れば寄るほど、「書類作成」と評価されやすくなります。

これからの現実解:安全な分業モデルに切り替える

では、受入れ企業・登録支援機関はどう動けばいいのか。現実的には、次のどれかに整理していくことになります。

  • 受入れ企業が自社で作成し、登録支援機関が提出(申請取次)する
  • 行政書士が書類作成・提出(申請取次)する
  • 行政書士が書類作成、登録支援機関が提出(申請取次)する

重要なのは、「誰が作ったか」「誰が対価を得ているか」を、契約と運用で説明できる形にすることです。


今すぐ見直すべきチェックリスト(契約・運用)

最後に、最低限ここだけは確認してください。

  • 契約書・見積書・料金表に「申請代行」「書類作成」「申請サポート」等の文言が残っていないか
  • 支援料の中に、実質的に書類作成の人件費が入っていないか
  • 申請書の入力者、内容確認者、署名・押印者が誰か、フローとして説明できるか
  • 理由書(作文)を登録支援機関が作っていないか
  • 「会社が作成した」ことを裏付ける社内記録(作成履歴、チェック表等)があるか

特定技能は弊所にお任せください

弊所は技能実習から特定技能まで多くのノウハウを持っています。

受入れ企業様・登録支援機関様それぞれの立場を踏まえ、「支援業務」と「申請書類作成」の線引きを明確にしたうえで、リスクを抑えた運用体制づくりまで一緒に整えます。

特定技能に関する手続は、在留資格の変更・更新だけでなく、雇用条件書、支援計画、各種届出など、関係書類が多岐にわたります。現場では「誰が何を作成し、誰が確認し、誰が提出するのか」が曖昧になりがちですが、弊所では書類の整合性と説明可能性を重視して対応します。

また、登録支援機関様向けには、契約書・見積書の文言整理や、社内フローの見直し(作成主体の明確化、役割分担、記録の残し方)についてもご相談いただけます。

「現状のやり方で大丈夫か不安」「どこまで支援機関が関与してよいのか整理したい」など、気になる点があればお気軽にお問い合わせください。初回のヒアリングで状況を伺い、最適な進め方をご提案いたします。

※サイトには特定技能に関する記事は少ないですが、特定技能創設の時点から2年で100名の実績がありますのでご安心ください。ただただサイトに特定技能の記事をこれまで書いていなかっただけです。