どこの国でも自国民を優遇します。もちろん日本においてもです。外国人の方にはビザ(在留資格)の問題が付きまとい、参政権はありません。制度上・管理上では外国人の方は多くのハンディキャップを背負った状態で日本で過ごさなければなりません。

それが、帰化して日本人になればハンディキャップは無くなります。見た目で判断されることは残ってしまいますが、それ以外は日本人と同じ扱いです。だって日本人だもん。また、日本のパスポートが手に入りますので、海外渡航しやすくなる方も多いと思います。

ただし、母国側からすれば「外国人になった」ということですので、よく考えた上で帰化申請してくださいね。

帰化と永住ビザの比較

日本に長期間住む外国人の方は、最終的に「帰化」か「永住ビザ」かを選ぶことになります(素行が悪い方は無理ですが…)。

国籍変更はナイーブな問題ですので、慎重に検討する必要がありますね。そこで帰化と永住を比較してみました。

帰化 永住
戸籍 ×
パスポート 日本 母国
海外旅行 自由 再入国許可必要
身分証明書の携帯 不要 在留カードの所持必要
在留カード 無し 更新あり
公的書類 最寄りの市役所で入手可能 大使館/領事館
届出 日本 大使館/領事館
役所手続き 日本人と一緒 外国人として
結婚手続き 簡単 大変
就職・転職 自由 自由
公務員 なれる ほとんどなれない
参政権 ×
退去強制 ない 可能性あり
標準審査期間 4ヶ月 10ヶ月前後

帰化と永住ビザの比較:戸籍

帰化して日本人になれば戸籍が作られます。

戸籍があることそのものにメリットはありませんが、日本人の妻や夫がいる方や、日本人のお子さんがいる場合はメリットになります。日本の戸籍制度は夫婦と独身の子供は同じ戸籍に入ることになっているのですが、結婚のことを「入籍」と呼ぶように同じ戸籍に入ることに特別の意味を見出している方も多いんです。

永住ビザの場合だと戸籍には入れませんので、日本人と結婚しても、その方の戸籍の備考欄的な部分に結婚したと記載されるだけです。

メリット:帰化>永住=その他ビザ

帰化と永住ビザの比較:パスポート

帰化すれば日本のパスポートを持つことになります。海外によく行かれる/行きたい方にとっては非常に大きな利点です。

「日本のパスポート最強説」なんてことも一部で言われているのですが、日本のパスポートを持っていれば多くの国でビザが不要になります。ノービザとも言いますが、観光旅行であれば飛行機のチケットがあれば入国できるんです。一方でパスポートの弱い国の外国人の方であれば、出国前にビザを取得しなければならないことが多くなります。

パスポートの強さはこちらのサイトで確認できます。

メリット:帰化>永住=その他ビザ

帰化と永住ビザの比較:海外旅行

帰化した場合、日本の入出国は自由です。

永住ビザの場合は外国人として扱われます。そのため、出国時に再入国許可申請が必要です。

許可申請と言うと面倒な印象ですが、空港で再入国出国記録(再入国EDカード)にチェックを入れるだけです。これをみなし再入国許可と言うのですが、1年以内に再入国する場合に必要となります。
1年以上日本を離れる場合は、事前に入国管理局にて再入国許可申請が必要です。面倒ですね。

しかも、再入国許可の期限までに日本に戻らなければ永住ビザは消滅してしまいます。

メリット:帰化>永住=その他ビザ

帰化と永住ビザの比較:身分証明書の携帯

日本人は身分証明書の携帯義務はありません。

永住ビザは在留カードを常に持っていなければなりません。

メリット:帰化>永住=その他ビザ

帰化と永住ビザの比較:在留カード

帰化すれば日本人ですので在留カードはありません。帰化する際に返却します。

永住ビザ所持者は外国人ですので在留カードは当然あります。また、「永住」ではありますがカードの更新はあります。7年ごとに発行手続きが必要ですが、通常のビザの更新のような審査はありません。

メリット:帰化>永住>その他ビザ

帰化と永住ビザの比較:公的書類

日本人の出生証明や婚姻証明など公的書類は日本の役所で全て揃います。外国人の方の場合は大使館/領事館、もしくは本国の役所からになります。

このメリットは帰化された本人ではなく、お子様が享受できるメリットです。生まれる前に両親が日本人になっていればお子様の公的書類は全て日本側の役所にあることになります。

メリット:帰化>永住=その他ビザ

帰化と永住ビザの比較:届出

帰化すれば、日本人になってからの届出は日本の市役所に対してのみで大丈夫です。

永住ビザの場合は住民管理をしている日本の市役所への届出はもちろんのこと、原則本国への届出も必要になります。婚姻届やお子さんの出生届は日本・本国の2カ国へ知らせなければならないんですね。

メリット:帰化>永住=その他ビザ

帰化と永住ビザの比較:役所手続き

役所での手続きって分かりにくいですよね。役所の人が丁寧に説明してくれますので分からなくても大丈夫です。

でも、外国人の方の場合は本人だけでなく役所の人も分かっていないことも。例えば手続きする上で本人の公的書類が必要になるケースがありますが、国籍によって名称は異なりますし、そもそも無いことも。同じ国籍の方がその役所で何人も手続きされているのであればスムーズに対応してもらえますが、特に地方の役所であればそもそも外国人の方の手続きがほとんどない場合が多く、やきもきするシーンが多々生じてきます。

日本の役所はきっちりしていますので、その分、例外に弱いんです。

メリット:帰化>永住=その他ビザ

帰化と永住ビザの比較:結婚手続き

日本人の結婚は戸籍謄本と婚姻届を提出するだけで成立しますのでとても簡単です。

外国人の方の場合、結婚手続きに何日、さらには1ヶ月以上かかる国があったり、結婚式が必須、証人の立会いが必要などなど、結婚成立するまで手間暇がかかる国も多いです。そして国際結婚であればお互いの国で結婚を成立させなければならず、婚姻具備証明書(独身証明書)など通常の結婚手続きでは必要のない書類を入手しなければならなかったり、結婚手続きのためにお互いの国に行き来しなければならない場合もあります。

結婚と帰化の順番で迷われているのであれば帰化をお勧めします。でも帰化申請中に別れることにならないようご注意を。

メリット:帰化>永住=その他ビザ

帰化と永住ビザの比較:就職・転職

永住ビザには就労制限はありませんので、就労ビザのように職業を縛られたり資格外活動許可のように労働時間の制限はありません。つまり、日本人と同じように働くことができます。

ただし、採用側のノウハウ不足によって外国人の方は採用を敬遠される可能性があります。永住ビザは自由に働けるビザということを知らなかったり、採用後の公的手続き方法(雇用・保険・税金など)をどうすればいいか分からなかったりなどで、それだったら日本人を雇おうという結論になる可能性があります。

帰化:◎ 永住:○ その他ビザ:△

帰化と永住ビザの比較:公務員

まず、外国人の方は警察や自衛隊、一部の例外を除き国家公務員になれません。国家の中枢や治安維持組織等は日本国民しかなれないんです。法律用語で言えば「公権力の行使」「公の意志の形成」「統治作用」に関わる職種については外国人の採用が制限されているんです。

一方で地方公務員は外国人の方でもなれるケースが増えています。永住ビザ等を所持していることを募集要件にしていることが多く、永住ビザの方は他のビザ所持者より選択肢は広いです。

ただし、昇進は制限されています。地方自治体が特別永住者の管理職への昇進試験を拒否したことが合憲とする判決が出ています。

帰化:◎ 永住:○ その他ビザ:△

帰化と永住ビザの比較:参政権

残念ながら外国人の方には選挙権・被選挙権はありません。

帰化:◎ 永住:× その他ビザ:×

帰化と永住ビザの比較:退去強制

日本人は退去強制されません。行く先がありませんしね。悪いことをすれば刑務所です。

一方で外国人の方は正規ビザを持っていても犯罪内容によっては国外へ退去させられます。永住ビザを持っていてもです。

メリット:帰化>永住=その他ビザ

帰化と永住ビザの比較:申請期間

帰化・永住ビザのどちらも通常のビザの申請より審査期間は長くなります。また、審査期間中に所持しているビザの在留期限を迎える場合はビザの延長(在留資格更新許可申請)をしなければなりませんのでご注意ください。

申請名 標準処理期間
帰化申請(帰化許可申請) なし(実際は10ヶ月前後)
永住ビザ(永住許可申請) 4ヶ月

※標準処理期間は法務省が公表している申請から許可が出るまでの期間です。あくまで目安の期間となります。