外国人人材を雇用する場合、日本に住んでいる外国人人材を面接して採用する方法が一般的ですが、海外で採用して日本に連れてくる方法もあります。海外採用となると、日本人の感覚としてはハードルが高そうですね。でも、人材紹介会社経由、取引のある海外会社からの転職や出向、大学との提携など、グローバル化が進むにつれて採用チャンネルも増えてきていると感じています。

また、海外在住の外国人人材を日本で働いてもらうためには、いくつかのハードルがあります。採用しても日本で働くことができるとは限りません。その最も大きなハードルがビザ(在留資格)の問題です。日本で働くためにはパスポートがあればいい、という訳ではなく、就労ビザという働くためのビザ(在留資格)が必要となります。

就労ビザとは?

「外国人」は「外国」に無条件で移住はできません。日本を含め、世界中の国が条件付きで移住を認めています。日本で働くということは、日本に住む(移住する)ということですので、条件をクリアしない限り日本に移り住んで働くことはできないのです。

その条件とは、ビザの種類によって異なります。日本のビザの種類は約30種類あるのですが、そのうち働くためのビザを総称して就労ビザ(労働ビザ・ワーキングビザ)と呼ばれます。就労ビザは職種によって細かく分けられており、基本的にはそのビザで決められた仕事内容しかできません。例えば、芸術ビザであれば音楽の指導者、技能ビザであれば料理人という具合に、就労ビザの種類と仕事内容は切り離せないようになっています。サラリーマンのようなホワイトカラー職種であれば、「技術・人文知識・国際業務ビザ(通称:技人国ビザ)」が代表的なビザとなります。

そして、就労ビザをはじめ、多くのビザには「就労制限」が設けられており、所持しているビザと無関係の仕事をすることはできなくなっています。

また、海外から連れてくる外国人人材には当てはまるケースはほとんどありませんが、就労ビザ以外のビザ所持者でも雇用することが可能です。それは身分系ビザと呼ばれるビザで、日本人と結婚された方や、日系人、永住権所持者用のビザを持っている外国人人材は仕事内容を問われず自由に働くことができます。
※身分系ビザ:日本人の配偶者等ビザ、永住者の配偶者等ビザ、定住者ビザ、永住者ビザ。詳しくはこちら

そのほかにも、資格外活動許可を得ている留学生なども1週間に28時間以内ですが働くことができます。

海外で採用!外国人人材の検討〜雇用までのイロハ

ここでは、海外で人材募集する際に気をつけることをビザの問題とリンクさせながら解説します。また、会社で働くための代表的な就労ビザである技術・人文知識・国際業務ビザを前提として取り上げます。

技術・人文知識・国際業務ビザでは主に下記の赤字の条件を満たす必要があります。

技術・人文知識・国際業務ビザの要件(一部抜粋)

・学歴要件 or 実務経験10年以上(技術・人文知識業務の場合)
・業務内容と学歴・専攻内容の一致(技術・人文知識業務の場合)
・大学卒業以上 or 実務経験3年以上 (国際業務の場合)
・日本人と同等以上の報酬

技術・人文知識・国際業務ビザの詳細はこちら↓

採用活動前の準備 ①業務内容の選定

日本人を採用する場合であれば、人物像や能力といったパーソナルな部分を決めることが多いと思いますが、外国人を雇用する場合はそれらに加えてビザの問題が生じます。そのため、まず最初に大まかで結構ですので、仕事内容を決めておきます。

ここでは技術・人文知識・国際業務ビザを前提としていますが、このビザはブルーカラー業務に就く事は不可です。ブルーカラー業務の場合は、先ほど「就労ビザとは?」でご紹介した就労制限のないビザ(日本人の配偶者等ビザ、永住者の配偶者等ビザ、定住者ビザ、永住者ビザ)や資格外活動許可を持った留学生など(ただし労働時間の制限あり)に限られます。

採用活動前の準備 ②学歴・専攻の決定

基本的には大学卒業以上の学歴が必要となります(短大含む)。海外の専門学校の場合は高度専門士(主に4年制以上)、日本の専門学校の場合は専門士(主に2〜3年制)の資格が必要です。能力の高さやビザの取りやすさから、まずは大学卒業以上の学歴のある外国人人材を優先しましょう。

その際、「採用活動前の準備 ①」で決めた業務内容と学歴・専攻がリンクしていなければなりません。

また、学歴・専攻内容が業務内容とリンクしていなければ、10年以上の実務経験があればビザ取得が可能となります。実務経験には「大学、高等専門学校、高等学校、(中等教育学校の後期課程または専修学校の専門課程)において関連する科目を専攻した期間を含む」とされていますので、例えば3年制の工業高校を卒業し、7年間の実務経験があれば10年以上の実務経験があるとしてビザ取得の可能性があります。ただし、実務経験は履歴書ベースではなく客観的に証明できなければなりません。

その他に、資格を持っていれば学歴要件をクリアできます。ただし、対象となる資格はそれほど多くなく、また、IT系の資格に限られます(下記リンクをご確認ください)。

法務省:出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令の技術・人文知識・国際業務の在留資格に係る基準の特例を定める件

文系職種の場合

マーケティングの場合であれば、経済・経営学系の学部・専攻をしている必要があります。経理であれば会計・商学などですね。営業職は幅広い能力を求められることも多く、技術営業であれば理系学部・専攻であってもビザを取れる可能性があります。

理系職種の場合

プログラマー、SEであれば情報工学系、電機メーカーの開発職であれば工学系の学部・専攻をしている必要があります。CADを扱う仕事については、理系学部であればCADを学習しているケースが多く、取扱商品と関連性の薄い学部・専攻であってもビザを取れる可能性があります。

国際業務を取り扱う場合

通訳や翻訳、語学指導、広報、宣伝または海外取引業務、服飾もしくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務を行う場合は、先ほどご紹介した理系職種(技術業務)・文系職種(人文知識業務)とは異なり、業務に関連する実務経験は3年以上とされています。外国人人材特有の能力が期待されているということで、実務経験は短期間でよいとされています。

また、通訳・翻訳・語学指導の場合は実務経験が免除され、短期大学・大学卒業以上であればOKです。学部・専攻は問われません。

採用活動開始

「採用活動前の準備 ②」で決定した学歴・専攻を満たす又は実務経験のある人材のみをピックアップして選別・面接等を進めていきます。また、日本語能力が必須の仕事であれば、面接を通じて日本語レベルを確認する事はもちろんのこと、日本語能力試験などの資格で判断することも可能です。

採用決定後 ①ビザ申請に必要な書類の収集

外国人人材本人の書類を用意します。

  • 卒業証明書
  • パスポート
  • 証明写真(縦4cm×横3cm。申請前3ヶ月以内に撮影されたもの)
    ※学歴要件ではなく実務経験要件でビザ申請する場合は実務経験を証明する資料が必要です(例:在職証明)。
    ※学歴要件を専門士・高度専門士とするのであれば、その資格を取得した証明書が必要です。

併せて、ビザ申請に必要な自社の書類を用意します。会社規模によって必要書類は変わります。会社の規模によってカテゴリー1からカテゴリー4と分けられています。

  • カテゴリー1:上場企業、公共団体など
  • カテゴリー2:給与所得の源泉徴収票合計表の源泉徴収税額が1,500万円以上ある団体・個人
  • カテゴリー3:給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体・個人(カテゴリー2を除く)
  • カテゴリー4:他のカテゴリーに該当しない団体・個人

※カテゴリーの詳細はこちら→

カテゴリー毎の必要書類についてはこちらでご確認ください。

採用決定後 ②ビザの申請(在留資格認定証明書交付申請)

海外から外国人を日本に連れてくる場合は、企業が外国人人材のビザの申請をします。この申請を「在留資格認定証明書交付申請」と呼びます。また、我々のような行政書士または弁護士に代行申請を依頼することも可能です。

申請書提出者:企業 or 申請取次の資格を持つ行政書士/弁護士

申請先:入局管理局(居住予定地、受入れ機関の所在地を管轄する地方入国管理官署)

審査期間:1〜3ヶ月(申請から許可/不許可されるまでの期間)
※審査期間は目安です。
※不許可になった場合でもすぐに再申請可能です。ただし、必ず不許可理由は確認しましょう。

採用決定後 ③在留資格認定証明書交付申請〜許可後

在留資格認定証明書付申請が許可後のフローは下記の通りです。また、下記③の日本大使館/領事館でのビザ申請の前に、外国人人材の居住地と航空券を用意しましょう。

①入国管理局から在留資格認定証明書が申請した会社に送付される

在留資格認定証明書は申請をした方の元に送付されます。行政書士に申請代行を依頼した場合は行政書士宛に送付されます。また、在留資格認定証明書の有効期限は3ヶ月ですのでご注意ください。

②在留資格認定証明書を外国人人材に送付

EMSなど追跡ができる国際郵便を使いましょう。在留資格認定証明書は再発行できませんので、紛失した場合は再申請しなければなりません。

③日本大使館/領事館でビザ(査証)申請・許可

外国人人材の母国にある日本大使館/領事館でビザ(査証)の申請をします。
基本的には外国人人材本人が直接出向いて申請することになります。

必要書類:

  • パスポート
  • 在留資格認定証明書
  • 写真
  • ビザ申請書(大使館/領事館にあり)

※国によって他に書類が必要となる場合があります。
※ビザの種類によっては他の書類が必要となる場合があります。
申請受理後、約5日でビザが発給されます(申請受理後、5業務日が標準処理期間とされています)。
※詳しくは申請予定の日本大使館/領事館にご確認ください(ホームページで確認できます)。
※在留資格認定証明書があるからといって、必ずしもビザが発給されるとは限りません。

④外国人人材の来日

ビザが発給されると、いよいよ来日です。在留資格認定証明書の有効期間内(3ヶ月)に来日必要ですので、期限には注意しましょう。また、入国時に在留資格認定証明書の原本の提示が必要ですので必ず飛行機内に持参させてください。

在留カードの取得

入国後は在留カードを取得します。免許証みたいなカードで、外国人の身分証明書となります。2018年5月現在、成田空港、羽田空港、中部空港、関西空港、新千歳空港、広島空港、福岡空港から来日した場合は空港で在留カードを取得できます。それ以外の空港からの来日の場合は、パスポートに「在留カードを後日交付する」旨が記載されます。住民登録後、10日程度で住所に在留カードが郵送されます。

住民登録

在留カードまたは「在留カードを後日交付する」旨の記載のあるパスポートを持って住居地を管轄する市区町村役場に住民登録をします。

来日後の諸手続きのアドバイス

海外から呼び寄せた外国人人材は日本の文化や仕組みに不得手です。そのため、基本的には「会社名義」で手配することになります。

特に住む家については敷金・礼金の事はもちろんのこと、保証人、さらには外国人との直接契約が難しいという問題もありますので、来日当初は会社が用意する必要があります。

また、銀行口座の開設も銀行の仕組み上、断られることもあります。会社と取引のある銀行に相談してみましょう。それでも口座開設が難しければ、ゆうちょ銀行など外国人が口座開設しやすい銀行にあたってみましょう。

結婚している場合は配偶者・子供と一緒に暮らせる配慮を

外国人人材が結婚していたり子供がいる場合は家族帯同についても考えてあげましょう。