国際結婚について調べていくと、たまに目にする「創設的届出」と「報告的届出」。

何となく意味が分かっている方もいると思いますが、改めて見てみますね。

 

創設的届出と報告的届出

国際結婚は、お互いの国で結婚することが基本です。例えば、日本人と韓国人が結婚した場合、日本でも韓国でも結婚したことにする手続きをしないといけません。

結婚の手続きというと、日本であれば婚姻届を出すことですね。ちなみに、外国では届出だけでは結婚できないケースもあります。宗教婚や儀式婚と呼ばれるもので、結婚式を挙げないと結婚できない国もあります。

 

前置きが長くなりましてすいません。

国際結婚はお互いの国で結婚することが基本と言いましたが、その最初の結婚手続きを「創設的届出と言います。

一方、創設的届出をしていない国に対して結婚したことを伝えることを「報告的届出と言います。「伝える」という表現にしたのは、創設的届出よりも簡略化されていることがほとんどだからです。先ほど、結婚式を挙げないと結婚できない国もあると言いましたが、報告的届出であれば結婚式が不要となります。その名の通り、「結婚したよ」と報告する手続きなんですね。

また、報告的届出はその国に行かなくても済むケースがほとんどです。どこで届出をするかというと大使館/領事館です。例えば、日本人とベトナム人が創設的届出を日本でした場合。報告的届出は日本にあるベトナム大使館/領事館で可能です。また、日本人とアメリカ人が創設的届出をアメリカでした場合も報告的届出はアメリカにある日本大使館/領事館で可能です。

 

創設的届出と報告的届出の必要性

日本には戸籍があります。ちなみに、戸籍のある国は珍しいです。

話を戻しますね。

日本では、戸籍に日本人の身分関係を登録し、その内容を公証しています。つまり、日本では婚姻届を出すと、結婚したという事実が戸籍に記載され、その内容が公的事実となります。戸籍を見れば独身か既婚かが分かるわけですね。

一方、この創設的届出のみをした場合、相手国側の情報はどうでしょうか?先ほどの「戸籍」は日本独自のものですので、他の国から見ることはできません。つまり、相手国からすると結婚したことを知る術がないので「結婚していない状態」となるわけです。

そのため、相手国側でも手続き(報告的届出)をしないといけないんです。そうしないと、世界中に夫や妻がいることになりかねませんしね。

 

創設的届出と報告的届出、どちらが簡単?

答えは創設的届出の方が難しく報告的届出は簡単、です。

創設的届出は、お互いの国で結婚できる条件を満たしているかを確認が必要で、その確認作業のために様々な書類を求めることが一般的です。また、結婚式などセレモニーが必須になることもありますので、時間・費用・労力がかかることも多いです。一方で、報告的届出は結婚したことを伝えるにとどまるケースがほとんどです。

そのため、国際結婚では創設的届出が楽な方から結婚手続きをする方が楽になります(詳しくはこちら)。

 

では、日本で「創設的届出」をする場合を見てみましょう。

まず、日本人が結婚できるのかを戸籍で確認することになります。本籍地以外に婚姻届を出す場合は戸籍謄本が必要ですが、結婚できるかを確認するためなんですね。ここで、年齢や独身かなどを確認します。

次に、外国人相手についても確認します。日本人であれば、結婚の条件や、その条件を満たしているかどうかは簡単に確認できるわけですが、外国人についてはできませんよね?そこで、この問題を解決するために外国人については本国政府などが発行した「婚姻要件具備証明書」という書類の提出が求められます。この書類は、その外国人が本国の法律上結婚できることを証明するものです。

そして、外国人が本国でも結婚できること、日本の法律上でも問題ないことが確認できて、ようやく結婚が成立します。

 

次に外国人配偶者の母国へ「報告的届出」をします。

日本に住んでいる場合は、一般的に外国人の国籍の大使館/領事館に結婚を報告することになります。その際、「結婚しました」と伝えるだけでは信ぴょう性が無いですよね?

そこで、日本で結婚が成立した証拠として、婚姻受理証明書(婚姻証明書)を提出することが一般的です。

 

日本での結婚手続きを「報告的届出」とすれば重婚できてしまう?

日本で報告的届出をする場合、従来の婚姻届と外国で結婚が成立した証拠を提出することになります。そして、それらの書類を受け取った市区町村役場は、一緒に提出された婚姻証明書などの証明書が本物かどうか、その結婚の無効原因の有無を審査し、問題が無ければ受理=日本での結婚が成立します。

そして、日本の民法では、外国で結婚した場合は正式な結婚であれば日本でも結婚が成立するとしています。つまり、他国で結婚が成立していれば、重婚だろうが近親婚だろうが適齢でなかろうが結婚を認める、となっています。

特に中東の国では男性の重婚を認めている国がいくつもあります。その国で第〇夫人のような形で結婚が成立すれば、日本でも受理されるということですね。

※先ほど例に挙げた重婚などは、無効ではなく取り消し理由とされています。どういうことかというと、「取り消し」という手続きをしなければ、その結婚は有効ということです。

また、重婚が禁止されている国の人と結婚した場合は、無効扱いになりますので、この場合は受理してもらえませんよ!あくまで、相手国の法律上、重婚が認められていればの話です。

 

これまでは報告的届出を前提として重婚があり得るということをお伝えしましたが、創設的届出でもあり得ますのでご注意を。なぜかというと、海外では独身かどうかは自己申告制としている国があり、「独身である」と嘘の申告をして結婚できてしまうことがあり得るからです。

先ほど、「婚姻要件具備証明書」で独身かどうかなどを確認すると説明しましたが、国によっては婚姻要件具備証明書が無い国もあります。それらの国では、「申述書」や「宣誓書」という形で独身を証明することになります。

嘘つき放題じゃん、って思うかもしれませんが、国によっては「嘘付くはずないじゃん」って感覚らしいです。

 

また、日本のように結婚や血縁などの身分関係の管理がきっちりできている国はあまりない気がします。ですので、図らずとも実は重婚でした、というケースも国際結婚では十分あり得る話です。